はてブの出来事

備忘録です。

「被害者なら警察に行くのが普通」は本当か?(改題)

このあたりの話については過去にもたびたび記事にしているのだが

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

わりと繰り返しになるけど、最近またそういう話が出ているので。

 

過去ブクマ

 

俺は本当にこのテーマについては何度も何度も書いている。はてブを始めた2018年から定期的に書いている。

 

昔援助交際してた(追記しました)

いじめられっ子が「これはイジメではない、友達間のおふざけだ」と自己洗脳するのと似た心理変遷に思える。性被害だと認めてしまうと尊厳が壊れてしまうから、主体的な行動なんだと塗り替え心を守ろうとするバイアス

2018/09/01 10:04

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拝啓 伊藤詩織様 | 差出人は25年前の最も有名なレイプ事件の被害者 | クーリエ・ジャポン

レイプだけでなくイジメでもパワハラでも人間の尊厳を踏みにじられたとき被害者は混乱し説明しづらい行動を取ることがある。俺は男だが同じような経験があるから伊藤氏の気持ちはわかる。風化も歴史改竄もさせまい。

2018/12/07 08:26

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伊藤詩織さんに山口さん代理人「被害後に加害者を気遣う言葉、社会常識ではありえない」 - 弁護士ドットコムニュース

胸糞。イジメ被害者が加害者を遊びに誘う、DV被害者が加害者に軽口を叩いてみせる、誘拐被害者が誘拐犯をからかう、全て自分の心を守るための反応だ。人間は尊厳を踏みにじられると混乱するし正常性バイアスが働く。

2019/07/11 08:23

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無力感を覚えて抵抗しないのは「普通」のこと 名古屋・性犯罪無罪判決、控訴審で精神科医が証言(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

苛烈なイジメ被害者もパワハラ被害者も、普通は抵抗しないし、なんなら表向きは笑って受け入れたり軽口叩いたりすることも多いからね。安全確保のため、パニックのため、心を守るため、そうした反応は起こる。

2019/12/14 06:50

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(社説)伊藤氏の勝訴 社会の病理も問われた:朝日新聞デジタル

ネットの反応見ると、今まで本事件を「よくわからん、どっちもどっち」みたいに扱ってた人の多くもツッコミに回っている。それほどまでに「性暴力被害者は笑ったりしない」という主張は時代の感覚と乖離しすぎてる。

2019/12/20 13:12

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下請けに性的関係を迫らないでほしいという簡単なお話(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

屈辱感は重要キーワード。童貞をプロデュース。でもあったけど、パワハラやセクハラで他人に屈服させられるのは人間の尊厳を大いに損なう。被害者は心を守るために「しょうがねえなーw」などとおどけたフリをする。

2020/05/18 19:47

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いじめ紀行を再読して考えたこと 02-90年代には許されていた?

被害者と加害者が友人って超よくある事だよ。俺も加害者たちと家を行き来して遊んでた。連日教室で全裸にされ脱がされた下着を女子に投げつけられたりしてたが、心の尊厳を守るため「やめろやw」等と言っていた。

2021/07/23 22:29

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ウィル・スミス氏が米アカデミー退会を表明 授賞式での平手打ちは「言い訳のしようもない」と - BBCニュース

スミス含め皆笑ってたというが、芸人が面白顔で何かを叫んで壇上から客席を煽ったら、とりあえず反射的に笑う事は不自然じゃない。尊厳を蹂躙されて混乱した人が、自己防衛で無意識に表情を笑顔で固定する事もある。

2022/04/05 11:10

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被害者は意外と加害者を憎まない

良記事。被害者が「自分が被害を受けた」事実を受け入れがたく、自分と向き合えずに「被害など受けていない」と考えてしまう。俺もいじめについての記事でその辺を書いたよ https://shin-fedor.hatenablog.com/entry/2022/11/25/123310

2023/01/04 09:07

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権力勾配理論の弊害と欺瞞|山口貴士 aka 無駄に感じが悪いヤマベン|note

権力的に弱い人間(例えば被保護者)は強い人間(例えば保護者)に忖度する思考が働くため、「彼女は自由意志で養父とセックスしたのだ」といった構図には疑う余地があり、全否定できない。/人名直ってたのでコメ消

2023/02/05 09:27

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(追記)元AV女優がジャニーさんの件について思ったこと

おそらく普遍的な人間心理かと。いじめや差別に対しても、「自分を被害者だと認めたくない」「なので被害を矮小化し、他の被害者を叩いたり、加害者をかばったりする」というのは、何度も体験も観測もしてきたよ。

2023/04/13 09:34

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これは同じ状況になったことがない人には想像が及びにくいことなのだろうか?

 

「正しい被害者」の振る舞いはなかなかできない

 

俺自身は小中の頃ハードなイジメ(教室で全裸にされて服を窓から投げ捨てられたり、かばんなどの私物にみんなから爆笑しながらつばをかけられたり)に遭ったが、それまで家族や友人と幸せで楽しい人生を送ってきたのに、安全なはずの学校で、自分が玩具のように扱われ、尊厳を踏みにじられることを受け入れがたく、どうしたかというと「自分はイジメに遭っているのではない」という自己暗示を行い、「ちょwふざけんなよ」などとイジメではないかのように振る舞ったのだ。あのとき俺が自殺でもしていたら、教師や級友たちは

 

「イジメとかじゃないですよ、笑い合ってじゃれていたし、時には叩き返したり、要求を拒絶したりしていました。楽しく雑談したり、サッカーをしていた。本当にイジメなら、そんなことできないでしょう?」

 

と証言したことだろう。

 

あるいは、昔一瞬だけいたある職場で、先輩からのハードなパワハラを受けていた同僚は、退職することになったあと、最後に一度出社し、お芝居のようにパワハラ先輩の両手を握って泣きながら感謝を表明していた。そのぐらい先輩が恐ろしく、恨みを買わないように全力で媚びて辞めなければ、安心して次の人生に進めなかったのだろうと思う。

 

ジャニーズの件で大変多く目にしたのが、「当事者の会のAは、弟をジャニーズに入れさせたり、ジャニーズがいかに楽しいかを本にして、子どもたちに入所を推奨していた」「ジャニーさんの葬儀に出て泣いたりしていた」「本当の被害者ならそんなことをするはずがない」といった言説だ。

 

書籍「男性の性被害」についての吉田豪の書評では、豪さんがジャニーズ性加害問題についてこんなふうに書いている。

 

shinsho-plus.shueisha.co.jp

 

 なお、ボクはジャニーズ性加害問題当事者の会のメンバー複数名とイベントで一緒になったこともあるんだが、性被害について、特にバックステージではお互い笑い話みたいにツッコミ合ってたりするのが印象的だった。

 

 本人たちも言っていたのは、少年期に性被害を受けて、学校ではそんなことバレたらナメられるから誰にも言えなかったし、だからこそ同じジャニーズ事務所の仲間では同志みたいな意識も芽生えたし、お互い笑い話にでもしなければやっていけない感情もあったらしい。“あいつら、笑ってるから全然トラウマになんかなってない”的に思う人もいるだろうけど、そんなのは大間違いってことだ。

 

太字強調は俺による。豪さんはこういう機微がわかる人なんだよなあ。

 

ともかくイジメの、パワハラの、セクハラの、モラハラの、全ての被害者には

 

「尊厳を踏みにじられて玩具みたいに扱われたなんて恥ずかしい」

「自分を性被害者だなんて認めたくない」

「加害者を怒らせるのは怖い」

「できれば全部なかったことにして今までの生活や人間関係を続けたい」

 

といった複雑な感情があるんですよ。だから加害者に阿るような態度を取ったり、対等であるかのように振る舞ったりしてしまう。加害者の思うつぼなんだけど、心を守るためにそういう反応をし、そんな自分自身を責め続け、病んでしまったりする。

 

ジャニーズの件はその上に「尊敬する大カリスマ」「頼れる先輩も心許す同僚も可愛い後輩もみんなそのカリスマを神の如く崇めている」という状況でさらに感情が複雑骨折している。

 

弟を入所させたり若い子を勧誘したりしたのは、自分が憧れのジャニーさんに尊厳を蹂躙され、傷つけられ、被害に遭ったということを受け入れられず、「自分はひどいことをされていない」「あんなのは大したことじゃない」「なぜならジャニーさんは素晴らしい人だから」「あれが本当にひどい被害なら、同じ事をされた先輩たちがそう言うはず」「変に騒いで大好きなジャニーズを壊したくない」といった正常性バイアスがかかり、それを自分に証明するための、暗示をかけるための行為だったんじゃないか。

 

時間が経って、自分の性被害を認められるようになったのが「今」なのだとしても何もおかしなことはないと思うよ。というか当事者の会のメンバーでも「今でもジャニーさんのことは尊敬しています」と言ってる人何人かおるよね。「性加害されたのなら尊敬しているはずがない」とでも言いますか?って話よ。人間理解が単純すぎないか?

私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。

自分の尊敬する人がクソ野郎であることを認めるのって実はかなり難しく、「あれは愛のムチだった、今は感謝している」などと美化したり、尊敬する人を正当化するために自分もハラスメントを始めたりするのよな。

2022/03/21 20:02

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「ジャニーさんは地獄行き」「遺骨かっぱらった」長瀬智也、中居正広らに覚えた違和感は“愛か憎か”(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

ダーク・ヴァネッサじゃないが、グルーミングされた性被害者は自分の尊厳を守るべく加害者を強くかばう事がある。彼らの喜多川への信仰は「今」も続いてる。洗脳を解く為にもオウムのように名称変更は必須なのでは。

2023/09/07 09:45

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そこまでハードなイジメやハラスメントを受けたことがない人であっても、「なんであんなことされたのにあんな態度取っちゃったんだろう」「なんであのときああできなかったんだろう」「なんで抵抗しなかったんだろう」「叫べばよかった」「逃げればよかった」と後悔したり自分を責めたり、取り返しがつかないぐらい時間が経ってから脳内でやり返したり言い返したりしたことくらい、ないのかね?あのとき自分がされたことは本当にひどいことなんだ、自分は深く傷つけられたんだということを受け容れるのは簡単じゃない。

 

身の危険を感じてフレンドリーに振る舞うことない?

 

または身の危険を感じて加害者にフレンドリーに振る舞うケースもある。以前、女性キャンパーがおっさんのナンパをあしらい続け、最後にブチ切れる動画がはてブでも話題になったよな。

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あの動画、前半は女性キャンパーも笑顔で冗談っぽく男に対応してるんだけど、それって要はおっさんを逆撫でしないように必死であしらってるんだよ。でも笑顔で冗談っぽく対応しているところだけを取り上げて「女の方も好意的だっただろ」「てか本当に嫌なら最初から逃げるか大声出せよ。ニコニコしてるから男も良いのかなって思うんだよ」みたいな反応もあるよな。

 

あるいは幻冬舎の天才編集者箕輪厚介氏が下請けのライター女性にセクハラで告発された件。

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joshi-spa.jp

これも女性ライター氏は、LINEでの対応だけ見ると箕輪氏のアプローチに対して一見フレンドリーで、楽しそうに応対しているわけ(読めばわかるが箕輪氏の誘いを全てはっきり断っている。ただしフレンドリーに)。ライター氏からしてみたら大きい仕事をするチャンスだし、なんとかして担当編集者の機嫌を損ねないようにかわしているんや。が、これもわからん人には「女性ライターも箕輪といっしょにノッてて仲良いじゃん」「この態度は男側が勘違いしてもしょうがないでしょ」とか言われてしまうやつなんだよな。

 

まーとにかく「一見フレンドリー」「一緒に楽しくノッているように見える」のは、権力勾配やら、恐怖心からの自衛のためにやってるってことが普通にあるんだよ。

 

「本当の被害者」はみんな警察に行っているのか?内閣府調査より

 

特に「まさかこの人が自分にそんなことをするとは」「まさか自分がこの人にそんなことをされるとは」という相手から不意に尊厳を踏みにじられてパニックになるなんて心理の機序は普遍的なものかと思うが、わからんもんかな。わかりやすいキモオジのような人物の事は警戒しても、尊敬する恩師や先輩の事は警戒できなかったりする。

 

「本当の被害者なら即警察に行くはず~」とか言っちゃう人らは想像力がゼロかよ。それが自分じゃなくても、例えばあなたの大事な家族が性被害に遭い、ショックや混乱で「正しい被害者像」を演じられなかった場合を考えてみてくれよ。それを他人が「なんで警察行かないのか意味不明」とか「翌日普通に友人と遊んでおり被害者ではあり得ない行動だ」「加害者にこんなメールを送るはずがない」とかなんとか責めてくるのよ。

 

(以下、1/14追記)

 

www.newsweekjapan.jp

 

こちらの記事で、

 

被害者のうち警察に相談する人はたった5.6%に過ぎない。誰にも相談しない人がもっとも多く、約6割を占める。

 

とある。ソースとなる数字は、安倍政権時に行われた、内閣府による性暴力についての調査。男女5000人を対象としたものだ。上の記事の数字は男女合わせてのもののようだが、ここでは女性の方の数字だけ見てみよう。

 

(なお、相談できない、警察に行けない泣き寝入り率は男性被害者の方が圧倒的に高い。ほぼ0人)

 

www.gender.go.jp

 

女性の回答者は1803人。そのうち、8.9%にあたる160人が「無理やりに性交等をされた被害経験あり」と答えている。学校や職場の自分の知人女性のうち1割弱が「無理やりに性交等をされた被害経験あり」と考えると、思ったよりも「多いな」と感じないだろうか?俺は衝撃を受けたよ。きっとあなたの周りにもいる。

 

同じく女性の被害者だけで見ると、被害を誰かに相談したのは125人中37.6%(47人)。警察に相談したのが125人中6.4%(8人)。

 

性被害者の9割以上は、警察に行けていない。

 

なので、「なんで警察行かなかったの?被害者なら普通行くでしょ」という言説は、まったく現実と異なっている。警察に行ける被害者の方が超レアなんだよ。

 

普通は警察に行くのだとしたら、なぜ被害者の9割以上が警察に行っていないのか?彼らのいう「普通」って、何?そんなものは、いわゆる「僕の考えた正しい被害者像」でしかないのでは。

 

避難所の被災者がパチンコに行ったって、難民キャンプの子供がスマホゲーで遊んだって、文句つける人種はいるからな。「本当の被災者ならパチンコなどするはずがない」「本当の難民ならスマホなど持っていない」とかな。

 

(7)相談しなかった理由
 無理やりに性交等をされた被害について、「どこ(だれ)にも相談しなかった」という人(85 人)に、相談しなかった理由を聞いたところ、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」が 43.5%と最も多く、次いで「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」(32.9%)、「そのことについて思い出したくなかったから」(21.2%)などとなっている。(図 5-7-1)

*1

 

「恥ずかしい」、あるいは「屈辱」と言ってもいいかもしれない。

 

昨日まで、人権を持つ一人の立派な人間として、社会からも周囲からも尊重され、愛されて、それが水や空気のように当たり前だと思って生きてきた人間が、ある日突如として、思いも寄らない形で、遊び半分で弄ばれ、玩具のように扱われ、性欲の捌け口にされたなら。自分の尊厳が蹂躙されたなら。自分が尊厳ある一人の人間じゃなくなってしまった、破損してくだらない無価値な存在になってしまったように感じる。これは性被害だけじゃない、パワハラ被害者やイジメ被害者にも共通する、普遍的な心理だと思うんだよ。

 

なので、できることなら「なかったこと」にしたいという感情が働くのだ。周囲に相談したら、警察に行ったら、被害が確定してしまう。これは怖いことだよね。自分という存在が気軽に、遊び半分で、玩具みたいに蹂躙されたことが、家族や友人にもバレてしまう。そうなれば、幸せだったこれまでの人生には二度と戻れないと考えるのは理解できるだろう?*2

 

そしてショック状態で呆然としたまま日常生活を送るうちに、ますます警察には行きづらくなる。そのうちに「なんですぐ警察行かなかったの?」と責められるような恐怖も出てくるだろう。

 

これがもし通りすがりのレイプ魔に襲われたのなら、もう少しは「誰かに相談する」「警察に行く」という選択肢も浮かびやすいかもしれない。そういうのが一般的に想定される「性被害」なので、「性被害を受けた」という現実を理解しやすいからな。でも内閣府の調査を見てもわかるように、性加害者の属性はほとんどが身近な人間なんだよ。特に信頼する人間や尊敬する上位者が多い。普通の人間は、身近な信頼する人間の事は警戒していないため、性被害に遭ってもすぐに現実を理解し、受け入れるのが難しい。一般的に想定される「性被害」ではないからね。

 

日本人留学生の性被害 加害者は駐在員 見知らぬ土地で何が… | NHK | WEB特集

アンケート結果、衝撃的。現地の頼れる日本人男性たちによる留学生への性暴力が常態化しているのか。尊厳を踏みにじられた被害者は心を守るために「大したことない」と認知を歪めてしてしまう。犯罪者の思うつぼ

2022/02/18 08:27

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「この出来事はなんなのか」「自分はその気になればもっと強く拒否や抵抗ができたのではないか」「それをしなかったのは自分なのだから、あの出来事は仕方なかったのではないか」と自分を責める事で「信頼するあの人」と性被害の整合性を取ろうとしたりすることもあろう。

 

そのように身近な人間に性加害され、しかも「強く抵抗していなかったので合意と認定される」ケースが多かったので、不同意性交の法改正が必要だったのだよな。

 

で、かろうじて警察に行けた人はどうなるのかというと、だいたいどうにもならない。

 

2007年から2011年の統計資料を基にレイプ事件のうち裁判所で罪が裁かれるのはたったの1.92%と推定

 

ニュース見てるとしょっちゅう性加害者が逮捕されているように思えるが、実際はほとんど捕まることはない。「なんですぐバレるのに昏睡レイプなんかして破滅するのか」みたいな疑問を口にする人がいるが、全然バレないから大量に性加害者がおるのだ。

 

志らく on X: "今回の松本人志さんの件だけじゃなく、なんでそんなに週刊誌の言うことなんか信じるんだ?  この国は法治国家だ。被害にあったら警察に行くべき。もし警察で取り合ってもらえなかったり、加害者の事務所の圧力で事件をないものにされたらその時初めて週刊誌に訴えればいい。…"

丸田憲司朗、武内俊晴、千秋涼祐、千葉健太、樋野良輔。性加害者のスマホに数十人もの被害者の写真や動画が残っている事は珍しくない。それだけ泣き寝入りしており、すぐ警察に行ける被害者は少数。性被害の難しさ。

2024/01/11 16:36

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少なくとも、この状況は改善した方がいいというのは同意してもらえるんじゃないかね。そのために何か考えたくならないか?

 

↓数字の解釈が怪しいかもしれんので、検証用にリンクを貼っておく。自分で確認したい方はこちらを。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/r02/r02danjokan-7.pdf

 

なので。「なんで警察行かないの?」「普通は即行くでしょ。本当の被害者なら」みたいなことを平気で言うのは、本当に人間理解が浅すぎると恥じた方がいいんじゃないかと思う。特に落語家みたいに人間理解が深いはずと期待されるような人からこういう言葉が出ると、暗澹たる気持ちになるよ。

 

「自殺するぐらいなら会社辞めればいいじゃん」「自殺するぐらいならいじめっ子を殺せばいいじゃん」とかもそうだが、中学生レベルの素朴な主張をするマッチョが多いんだよなぁ。

(追記ここまで)

 

松ちゃんの白黒とは無関係に言っておきたいこと

 

そして今話題の松ちゃんの件については、どうなのかね。わからんことが多いが、松ちゃんや吉本は「どの部分」について「事実無根」と言っているのだろう。文春報道が一から十まで完全に事実無根なのか、そういった会が実施されていたことは事実だが、性行為についてはすべて女性たちと合意の上だった、と主張するのか。

 

(1/14追記。ABCテレビ「news おかえり」にて、島田薫さんが吉本に問い合わせたところ、

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「そういう飲み会はやっていたし、性行為もあったが、全員合意の上だった」という見解が出たそうな。またスポニチによれば、松ちゃん自身も「事実無根」発言を、単なる合意の有無の意味でしか言っていないという。

news.yahoo.co.jp

よって今の俺の認識はこれ。)

 

若い人は知らんだろうか、俺が多感な二十歳だった頃のダウンタウンってのは本当にすごい存在で、ごっつとガキとHEYHEYHEYは見てないやつの方が少ない、ほとんど共通言語のようなものだった。90年代においてSMAPダウンタウンと小室は社会的に別格の、まさに神のごとき存在だった。とりわけ松本人志の影響力よ。俺も普通に好きだったし、1万円(だっけ?)ライブのビデオを繰り返し観ていた。今田が入院するネタが凄かった。コントももちろんすごいんだけど、ガキ使などで見せるフリートークにおける閃き、切れ味が天才的だったんや。そして、俺は今回の一連の出来事には衝撃を受けている。裁判の結果がどうなれば昔のように松ちゃんで笑えるのかわからない。

 

まあともかく、今俺が言いたいのは、あのLINEを「被害者」が書くことは普通にあり得るということや。今後何がどう転がるにせよ、あれが「本当に被害者だったらこんなこと書かないでしょ」とゴリ押しされるのだけは現時点で抵抗しておきたい。松ちゃんを信じているファンも、擁護する人も、本当にここだけはわかっといてほしい。被害者がああ書くことは普通にあり得るのや。そこをあげつらうのだけはもうよそうぜ。

 

まとめ

  • 性被害者が警察に行くのは「普通」ではない。むしろ9割以上の被害者は警察に行けていない(内閣府調査より)
  • 性被害者がその相手にお礼メールを出すことは別に珍しい事ではなく、普通にあり得るし、それをもって同意があった証拠にはできない

 

少なくともこの2点ぐらいは常識として共有されてほしい。告発者たちを疑うのはいいが(もちろん冤罪もあり得る)、「普通は警察に行くはず」「被害者がお礼メールを出すはずがない」は認識を改めてくれということ。それは言っちゃいかん言葉だよ。

 

以下の望月晶子弁護士のコメントもよくわかる。尊厳を蹂躙され、破壊された人間の心の動きは、単純じゃないんだよ。

 

被害者が平静を保とうと、普段と変わらない行動をすることは決して珍しいことではありません。むしろ弱者である被害者が、加害者におもねるような言動をとることはしばしばあります。同時に性被害者は『あんなところに行ってしまった自分が悪い』という自責感に苛まれ、苦しんでしまう。こうした被害者心理への理解が少しずつ進んでいる昨今の社会では、迎合メールが『同意のない性被害はなかった』と言い切る論拠にはなりません。

 

追記。辻愛沙子氏と、佐藤倫子弁護士のツイート。

 

 

上記のようなことは、以下の記事でも触れられている。

 

vsco.info

大阪高等検察庁の田中嘉寿子検事による講演とのことで、詳しく知りたい人は読んでみてほしい。現役検事の話は参考になるだろう。

 

こういう発信はまだまだ足りていないのかなと思う。知らないこと自体は仕方ないのかもだが、説明されたら理解してほしいものだ。

 

特に今回文春と告発女性を叩いているインフルエンサーの方々。一般大衆より知能が高いのが売りのはずなのに、昭和の価値観を持った量産型凡夫みたいなコメントしかできていなくて悲しくなる。世間の俗説・古びた常識を一刀両断し、現代的で合理的な知見を発信するから貴方がたに価値があるのではなかったか?それがネットで大量に見られる昭和の価値観を持った量産型凡夫みたいなコメントを発するようになったらおしまいなんじゃないの。キツいしサムいよ*3

 

さらに追記。ろくでなし子さんのポスト。

 

後日わたしはその先生のイベントにわざわざ出向いて行って、わたしから明るく挨拶してしまったんだよね。自分でも何がしたいのかわからないけど、全て無かった事にしたかったのだと思う

 

芸人も漫才師もこういう機微をこそ表現してほしい。

*1:※これは男女合わせての数字なのでさっきの女性のみの数字とは少し違うのに注意

*2:俺がイジメに遭ってた時も、家族にだけはバレたくなかった。家の中までその地獄で汚染したくなかったのだ。

*3:こういったキツいとかサムいとかいう言い回しを日本語に根付かせたのも松ちゃんだ。偉大さは疑うべくもない

堂本光一氏についての事実誤認・デマ発信のお詫び

anond.hatelabo.jp

 

こちら匿名ダイアリーで言及いただいていた。

 

俺が先日書いた記事で、事実誤認と思い込みに基づくデマを発信してしまった。

shin-fedor.hatenablog.com

 

元記事ではブコメでご指摘いただきすぐ確認して修正・お詫びをしたのだが、「同じ記事を2回見る人はいない」とのご指摘ももっともかと思うので、別記事を立ててお詫びいたす次第です。

 

■俺が発信したデマの内容

ジャニーズの会見後、キムタクに続いて堂本光一氏が、ジャニー喜多川氏のモットーである「Show Must Go On!」というメッセージをブログで発信した。このタイミングでジャニー氏の金言を発信するのは、社内外に間違ったシグナルを発することになるのでは?
(※この内容が俺によるデマです)

 

■事実

Show Must Go On!はもともと堂本氏のブログ名であり、今回そのフレーズを記事タイトルなどにして発信した事実はない。

ブログ内容はむしろ今回の事件に心を痛め、複雑かつ正直な心境を綴ったものであったとのこと。

 

間違った経緯は以下です。

 

①ジャニーズの会見後、木村拓哉氏がInstagramで「Show Must Go On!」という投稿を行う。

b.hatena.ne.jp

このフレーズ、ジャニー喜多川が日頃からモットーとしていた言葉だということで、キムタクは炎上レベルで非難され、その後投稿を削除した模様。この時点で俺は「会見では東山氏がジャニーを鬼畜と呼んではいたが、社内ではまだジャニーを慕うタレントや社員たちが、ジャニーを守ろうとしているのではないか?」「だから社名変更しないのではないか?」との疑いを強くする。

 

そこでこういうブコメをした。

木村拓哉、会見直後の”ジャニーズイズム”投稿が波紋「3人の会見が台無し」「推しだったけどこれはひいた」:中日スポーツ・東京中日スポーツ

こんなグループ内の大御所がジャニー支持を鮮明にしたら、社内のムードも「やっぱり一致団結してジャニーさんを守るのか」となるし、ジャニーに被害を受けて悩んでいるタレントがいても萎縮する。心理的安全性がない

2023/09/08 18:10

b.hatena.ne.jp

 

 

②その後堂本氏がブログを更新し、Xで話題になる。トレンドを見に行ったところ、またShow Must Go On!の文字が。「光一くんのShow Must Go On!更新」「光一くんありがとう」といったファンの反応が流れているのを確認。この時点でブログ名を記事名だと致命的な誤認をしたうえ、ファン以外のコメントもざっと眺めて「キムタクに続いて堂本氏もShow Must Go On!と発信したのか」と勝手に早とちり。しかもファン会員限定の有料ブログだったため、中身の確認を怠る。

 

木村拓哉氏とセット扱いで

「ベテランタレントたちが会見のあとにShow Must Go On!と発信した。これでは後輩タレントやファンに間違ったシグナルを送ってしまうのではないか」

というデマをブログに書いてしまう。

 

俺の書いた内容は完全にデマで、堂本氏に本当に申し訳ない。謝って済むものではないが、お詫び申し上げる。ジャニーズ事務所とファンの方々にもお詫び申し上げる。

 

とてもデリケートな時期に、いい加減で悪質な発信をしてしまい、申し訳ございませんでした。

 

間違ったシグナルを送ってしまったのは俺でした。

 

・ご指摘いただいた方に感謝申し上げます……!

・俺の書いたジャニーズ関連記事すべてからこの訂正記事にリンクを貼ります。

・また、当面の間は毎日このデマをサーチし、事実のように語られているのを発見したら接触し、情報の訂正をお願いしつつ、この記事に誘導します。

・今後しばらくジャニーズへの言及を控えると共に、上記以外のはてなの活動を自粛します。上記デマに関する問題が発生した場合はその限りではありません。

スコットランドヤードから日本警察への提言、あとMeToo私刑装置論など(ブコメへの感想いったん撤回)

※このたび堂本光一氏についてデマを発信してしまったので訂正とお詫びの記事を出しました。

shin-fedor.hatenablog.com

 

 

また俺がだらだら文を書くが、この目まぐるしいタイパ時代に長文読ませるの申し訳ないから、最初に結論だけ。

 

結論

日本の警察は、民間と協力して性被害者の相談窓口を作り、被害者たちに相談・告発を呼びかけると同時に、ジャニー喜多川の犯罪について捜査を開始してほしい。

 

news.ntv.co.jp

 

上の記事は、ロンドン警視庁本部、通称スコットランドヤードのトップ(司令官)だったピーター・スピンドラー氏のインタビューだ。

 

あらすじをざっと書くと、英国の国民的人気者で英雄だったジミー・サヴィルの死後、サヴィルの性加害への告発が相次いだ。もうサヴィルは死んでいるのだが、ロンドン警視庁は大規模な捜査を展開し、性被害者たちが相談できるような体制を整えた。大捜査の結果、生きている他の性加害者たちの逮捕にもつながった。

 

というお話である。これを日本でもできないか?って話。法律が違うとかはあると思うけど、絶対やる価値あるよ。

 

スピンドラー氏の発言をいくつか引用しよう。ベタ貼りで引用するので、上の記事を読んだ人は読み飛ばしてくれよ。

 

2012年の秋に、イギリスの主要テレビ局のひとつであるITVが、サビル氏の犯罪についてのドキュメンタリーを制作した後、捜査が始まりました。メディアでも大きく扱われたことで、多くの被害者が名乗りをあげ、サビル氏から受けた被害について語り始めたのです。

 

そこでロンドン警視庁は、番組が始まって3日ほどで捜査を開始しました。捜査を行う上で良かった点は、児童保護団体と連携して、24時間体制のヘルプラインを設置したことです。残念ながら警察には、被害者のために活動し、支援を提供できるようなヘルプラインがありません。

 

私たちは被害者から情報を聞き、警察官を送り込むだけという状況になりがちなのですが、児童保護団体が加わることで、被害者が警察の捜査を信用しなかったとしても、別の機関には情報を提供してくれるという体制を作ることができました。

 

捜査を開始すると発表してから数週間の間に、名乗り出る人の数は飛躍的に増加し、サビル氏についてだけでも40人、他の加害者についてはさらに何百人もの人が被害を名乗り出るようになりました。

 

私たちは、サビル氏の犯罪から学び、組織を強くする方法を見つけるために、サビル氏に関する情報が欲しかったのです。加えて、彼を守ったり、彼と一緒に罪を犯したり、あるいは彼が虐待するために若者を確保したりすることに関与していた人などについても情報を求めました。

 

今回の捜査では、「起訴」という刑事司法の結果を得ることはできません。加害者が死亡した日本でもこのような事態になりますが、私たちも同じ状況でした。

 

しかし、サビル氏の犯罪を幇助(ほうじょ)した人は他にもいるはずでしたので、被害者たちは、自分たちの話に耳を傾けてくれ、真剣に受け止めてくれると分かれば、名乗り出るだろうと思っていました。

 

名乗り出てくる人の数にかなりショックを受けました。サビル氏の犯罪を捜査すると発表した当初、性的暴行やレイプ、その他の虐待を訴える人が30人ほどいました。捜査を終える頃には、私たちのシステムには250件ほどの犯罪が記録されていました。

 

今となっては、被害者にふさわしい刑事司法を提供することはできなかったと認識しています。しかし、過去には不適切な捜査をして失敗したかもしれないが、今は被害者に社会正義の感覚を与えています。それこそが、本当に重要なことなのです。

 

被害者は、声に耳を傾けてもらい、信じてもらい、初めて真剣に受け止めてもらえたのです。彼らは「このような状況に陥ったのは自分のせいだ」と長年、自分を責めてきました。そして彼らは、愛する人にさえ黙って、何年も生きてきました。そして今、彼らは初めて「自分たちは1人ではない」と気づいたのです。

 

ですから、このような捜査を行うことは、加害者が死んでいようが生きていようが、たくさんのメリットがあるのです。

 

ある調査の結果、児童への性的虐待のうち、その時点で発見されるのはわずか5%程度であることがわかっています。大人になり、「そこで何が起こったのか」「何が間違っていたのか」「それは自分のせいではなかった」といったことを十分に理解してから被害を訴えることの方が多いのです。

 

また、他の人たちが名乗り出るのを見て声を上げる人が増えるということから、私たちは「数によって被害者に力を与えうる」ということを実感しました。だから私たちは、被害者が今週、今年、10年後と、いつ告白しても大丈夫だということを、加害者たちに改めて示したと思います。(時効をなくすことで、)犯罪による恐怖を被害者が持つのではなく、加害者に押し付けるのです。

 

そして最後。インタビュアーの質問に対してスピンドラー氏はこう答えた。

 

――日本でも、ジャニーズ事務所ジャニー喜多川前社長をめぐって「性加害」の問題が取り沙汰されています。イギリス警察の元司令官として、日本の警察に何かメッセージはありますか?

 

この事件を真剣に受け止めてください。彼が死んだから、起訴という刑事司法の結果が得られないということに焦点を当てないでください。社会正義の観点から考えてほしいです。

 

そして、彼がどのように活動していたかを捜査することによって、日本の被害者への信頼を築き、彼らが名乗り出るようにし、何が起こったのかについて発言し、話す場を与えることができるようにしてほしいと思います。

 

多くの場合、被害者は警察を信用しない傾向にあります。被害者を安心させる必要があるのなら、支援団体と協力し、他に相談できる人がいることを伝えて、被害者がさまざまな経路で通報できる体制をつくるべきだと思います。

 

これで俺の伝えたいことは全部な。要約すると

 

  • 警察はジャニー喜多川の性犯罪について、被疑者死亡のままで良いから捜査してくれ。幇助者がいるならそいつらを逮捕できるかもしれない。
  • また、「警察が動く」ことで、全ての性被害者に勇気を、全ての性加害者に恐怖を与えることができる。
  • 民間と組んで、性被害者が相談や通報をできるシステムを作ってくれ。

 

ということになる。

 

ここまでで言いたいことは終わり。離脱ポイントはここです。

 

MeTooという私刑装置?

以下の駄文はいったん撤回します。

 

正直言うと俺はこの問題については強い答えを持っていない。全く煮え切らないままに、整理できないままに書く。

 

生きたハーベイ・ワインスタインを牢獄にぶち込んだアメリカ、死んだジミー・サヴィルの栄誉を引き剥がし被害者の栄誉を回復したイギリス。輝かしい成果だ。

 

日本で一番話題になったのは、ジャニー喜多川を除くと、広河隆一の件だろうか?ただ広河は別に刑事告訴されたわけではなく、本人と会社が謝罪して、広河が失墜したところで物語は終わっている。

 

榊英雄木下ほうか岸勇希なども、刑事事件には至らず、本人たちが辞任する、干される、離婚に至るなどの形で去っていった。

 

言うまでもなく、MeTooは根本的にヤバい欠陥を抱えている。それは

 

「自称被害者によって、無実の“加害者”が吊るされる恐れがある」

「正義に燃えるネット民どもが勝手に正義を執行して良いのか?」

 

ということ。記憶に新しい黒歴史として、新井祥子元町議が引き起こした草津町冤罪事件がある。

 

 

www.facebook.com

増田都子
2月28日  · 
新井祥子元草津町議を支援する会」解散声明


 この3年間というもの、「町長からの強制わいせつ性被害」を信じ切り、彼女に騙され続けて彼女への支援を訴え、結果的に犯罪の加担者となってしまっていたことは、わが人生最大の痛恨事となりました。

 

杉田某の「(性犯罪に関して)女性はいくらでもうそをつけますから」発言の好事例を作ってしまったことは痛恨の極みです。

 

増田都子氏の言うとおり、この事件は「被害者がウソをついているのに大衆が扇動されて冤罪被害を超拡大する」という日本ネット史に残るウルトラ黒歴史となった。杉田水脈の言った通りになってどうする。

 

大学教授や弁護士といった社会的信頼度の高い人々が新井元町議のデマに乗って草津町を攻撃しまくったのだ。マジで酷い事件であった。

 

これを受け、はてなでは嫌われていることでおなじみの白饅頭氏がノリノリでこんな記事を書いた。そりゃノリノリにもなるわ。

 

gendai.media

 

以前書いたとおり、俺は白饅頭氏の邪悪なところが嫌いなのだが、この指摘は相当クリティカルに思える。感情レベルで反発はするものの、論自体は否定できない。「は?どこが?白饅頭なんか全部論理破綻してんじゃん」と思う人はぜひうまいこと反論してみてくれ。それ見たら俺もまた考え変わるかもしれん。

 

また、気まずいとかそういう次元の話ではないのだが、もう一つ大きな気まずさを残した事件を思い出したい。千葉美裸さんの自死だ。草津町ではノリノリだったハフポストが全力スルーした、あの件だよ。わーわー言ってたネット民の一人として俺は、この事件をずっと忘れずにいる。

 

今回のジャニー喜多川への告発がなければ、日本のMeToo完全に死に体になっていたのではなかろうか。五ノ井さんがタフに戦ってくれてる件とか、ゼロではないんだが、まったく社会として支え切れていない。ジャニーズのおかげでというのもなんだが、MeTooのリブートのチャンスを日本は与えられた。

 

でもなあ、結局「市民が勝手に裁くのはやべーでしょ」というのはついて回るんだよ。

shin-fedor.hatenablog.com

最重要なのは自由と人権

急になんやねんという感じだが、俺は道徳とか法律とかいうものは、その時代・その地域の大衆のお気持ちによってたまたま成立しているものだと思っている。

 

詳しくは以下の記事に書いている。

shin-fedor.hatenablog.com

 

意味がわかりづらいと思うが、つまり道徳も法律も「宇宙の絶対神みたいな存在が授けてくださった永遠不朽のルール」だとは思っていないということだ。時代によって価値観も変遷し、当然道徳も法律もそれに合わせて変わっていく。*1

 

神が定めた絶対ルールではないとはいえ、道徳や法律がないと社会は崩壊する。ルールを作るには、土台となる原則が必要である。

 

近代人類が手に入れた基本原則は「自由と人権」であろう。欧米の白人国家が発明したものであり、近代自由主義国家なら憲法も法律もこれらをベースにして設計している。

 

逆に言うと「自由と人権」を最上位に置かない全体主義国家とは、俺たちは根本的な価値観を共有できていないということになる。

 

主体思想を最上位に置く国もあれば、大ロシア主義とロシア正教に基づいて法律を作る国もある。共産党のエリートの指導を最上位に置く国もある。その辺の国々とは、現代日本人である我々は、基本的な価値観を共有できないことになっている。*2

 

この記事を読んでる人のほとんどはおそらく現代日本人なので、「自由と人権」の2本柱を価値観の土台に置いているという意味では俺と同じであるはずだ。という前提で話す。

 

まず、法律は絶対なのか?これは基本的にはYESなんだけど、法律をずっと遵守しているだけではけっこう限界がある。だいたい自由と人権の時代の始まりであるフランス革命はめっちゃ違法かつ野蛮だ。ギロチン処刑て。ノリとしては「虐殺」だろう。

 

まあフランス革命の是非は置くとして、違法だから悪、合法だから正義というわけじゃないのはあるよね。

 

俺たちは自由と人権を奉じている以上、現行法を絶対視せず、常に

 

同性婚できないのって、自由&人権観点からどうよ?」

「同姓別姓を選べないのって、自由&人権観点からどうよ?」

 

みたいに、社会のいろんな局面において「自由&人権」という観点から、現行法の検査とか棚卸しとかメンテナンスをする必要がある。

 

「とはいえ法治国家なんだから、法を変えることも法に則ってやるべき」

 

これはもちろん大正論。ただ「絶対」ではないのでは?という疑義をはさみたい。ポリコレの記事にも書いたけど、公民権運動の英雄ローザ・パークスは、人種隔離法という法律に違反して白人専用席に座り続け、逮捕されたわけだが、そっから公民権運動が大爆発して全米に広まったんだよね。

 

「それがどうした、法の枠組みの中で、真っ当な手段で人種隔離法の改正を目指すべきだ」

 

とか言ってたら、公民権運動10~20年ぐらいは遅れてたんじゃなかろうかね?

 

そしてMeTooの話だ。私刑装置はそうかもなんだが、人権の観点から、被害者救済の観点から、「他に手段がないじゃん」って思うこともあるんだよね。

 

たしかに私刑は良くないけど、性犯罪って、ほとんどが泣き寝入りしてんだよ。ここ数年、よくスパイキングとかデートレイプドラッグって話題になるじゃん。就活生を40人ぐらいレイプしていたクソ犯罪者が逮捕されるとか、定期的にあるよね。もしくは強い酒飲ませたりするやつね。丸田憲司朗、武内俊晴、千秋涼祐、千葉健太、樋野良輔といった連中が逮捕されてんだけど、ニュース見てると、「容疑者のスマホには40人以上の被害者の動画が残されており」とか言ってんだよね。

 

それでも、この連中は何年も逮捕されずにいたんだよ。つまり、逮捕される以前に40人ぐらいが泣き寝入りしてるということになる。ドラッグで意識朦朧としてるうちに数日経っちゃうとか、「泥酔しちゃったのかも」と自分を責めるとか、いろんな理由で被害者が警察に行けなかったり、行けても証拠も何もないわけだから、スパイキングは捕まりづらいんだってさ。これに限らず性被害は声を上げにくい構造ががっつりあるんだ。

 

また、児童の性被害なんて、誰にも言えずに何十年も経ったりするわけだろう。やっと勇気を持って訴えようったって、もう証拠も証人も残ってない。加害者が圧倒的に有利なんだよね。今の枠組みでは1:100ぐらいで加害者有利な状況だと思うんよ。

 

このアンフェアな状況を覆すために、MeTooみたいな乱暴な手段はある程度機能した。何十人も被害者が集まって、詳細に証言すれば、ワインスタインやサヴィルやジャニー喜多川を討ち取れるんだよ。もちろん、理論上は「嘘つきが何十人も集まったらどうするんだ」と言えなくはないんだが、それは「被害者の話と、加害者(疑惑)者の話を聞いて判断」すべきだろうと思う。

 

俺の持論として、「自動的に党派的思考で動くのではないく、1件1件自分で情報集めて判断しようよ」というのがある。

 

伊藤詩織さんの事件、俺は伊藤さんの言い分も聞いて、山口氏の言い分も聞いて、「これ両者の言い分の一致している部分だけ聞いても、同意なき性加害やんけ!?」と思ったので、伊藤さんの応援に回ったんだよね。しかし当時、山口氏は不起訴だったので、ブコメでは「不起訴なのに女の言い分鵜呑みにしてた人は謝らなくていいの?」とか揶揄されたんだけど、いや不起訴でも同意なき性加害はダメでしょ!?と意味不明であった。結局その後、民事で「同意なき性加害」は認定されたのだが。

 

逆に草津町の事件では、北原みのりさんが「私は性被害告発には無条件で女性に寄り添うと決めている」とか言っていて、いや無条件はダメでしょ、新井祥子の文章読んだらどう見ても狂った虚言癖じゃん!?と意味不明であった。

 

ちゃんと1個1個精査しようぜっていうのがあるんだよね。「精査ったって素人の一般人が勝手に判断してるんだから、なんの価値もない精査だな」という意見はあり得る。しかし俺たちは性犯罪に限らず、ビッグモーターみたいなニュースに対しても、自分なりに情報収集して意見表明をしている。「ニュースになるような物事は全部警察に任せて俺たちは沈黙してよう」とはさすがに言わんだろう?それこそ北朝鮮みたいじゃね?

 

まあネットの正義は余命ブログとかスマイリーキクチとか悪い例がいっぱいあるんだけど、まあこれらの例は本当酷いんでダメなんだけど。

 

現行法で人権救済ができないなら、合法な範囲内でだけど、救済が必要じゃないか?一人一人の行動や発信によって、あるいはメディアの取材などによって人権救済を実現するというのは、性被害だけでなく、いろんな場面で行われているし、MeTooに文句言ってる人だって、別の局面では、犯罪者じゃない誰かを批判したり擁護したりしてるだろ?

 

性被害疑惑やパワハラ疑惑に対して俺たちが黙るのも極端だし、やりすぎはダメだけどガチガチの運用もダメだと思うんだよなぁ。

 

……というのがいったん、MeTooの正当化だが、「いやでも私刑じゃん」という指摘に強く反論できるものでもないのかなとも思う。よって、

必要なのは「合法的/公的MeTooシステム」

だと思うんだよね。冒頭に書いたやつ。

 

つまり、警察と民間団体が組むことによる、性被害者救済システムを作る。その第一弾が、ジャニー喜多川事件の捜査だよ。

 

サヴィル事件におけるスコットランドヤードと同じことを日本の警察がやる

 

どっちのケースもクソ犯罪者はすでに死んでいるのだが、それはそれとして警察が乗り出して大々的に捜査を行い、「ジャニーだけでなく、芸能界だけでもなく、あらゆる性被害者はご連絡ください」とあらゆるメディアを使って大告知を行うわけ。

 

「警察が動いたー!?」

 

という事実は大きい。すごいインパクトがある。性被害者はめっちゃ勇気づけられるし、性加害者は全員縮み上がるよ。

 

その結果、警察が「これは立件できるな」って案件も出てくると思うんだよ。ジャニーの手足となって児童性加害に加担してたマネージャーとかいるみたいだからね。ジャニーズだけじゃなくて、圧倒的に多いハズの女性被害者にも、窓口まで相談してもらう。

 

MeToo私刑論者の人も、「うーむ警察の捜査なら間違いない」ってなるだろう。それがあった上で、「文春にたれ込むしかない」という判断もあってもいいかもしれんけど。有力な選択肢が増えれば、文春に頼るより良いケースはあるのではないか。というか日本社会、最近文春に頼りすぎてない?テレビとか新聞しっかりしてくれよ。

 

ジャニー禍というものを奇貨として、日本から性犯罪を一掃しようという話である。

 

ブコメへの感想もいったん撤回

なるほど、皆さんやはりMeTooは問答無用でダメという方が多いようだな……。もうちょっと「悩ましいね~」みたいな人が多いかなと思ったんだが、どうも俺がズレていたようだ。せっかくスコットランドヤードから良い提案があったのでそっちを広めたいのに、ブコメMeTooの是非の方にばかり反応されてしまうのはまったく本意ではないため、いったん現状ではMeTooが必要悪な面も~的な話は撤回する。すみませんでした。

 

上にも書いた通りMeTooありやなしやについては、俺も考えがまとまってない。ブコメではMeTooなんかダメに決まってるだろ」ぐらいのことしか書けないと思うので、どっちみちブログとブコメでがっつり話すのなんか非対称すぎて無理だよな。いずれ、例えばブログtoブログで対話可能な方がいたら、別記事で改めてお付き合いください。問題の解像度を上げたいだけで、別に論破勝負しようぜみたいな話じゃないのだよ。なんかMeTooの何かがものすごく警戒されるんだろうなー。なんならチャットとかメールでもよいよ。

 

とにかく警察が捜査してくれればいいのだという話なら皆さん同意いただけるはずだよね。本来訴えたかった主題から脱線してしまい失敗だった。最初に書いた「結論」までが、この記事で俺の言いたい全てです。

 

以下のテーマは俺の中で宙ぶらりんにしておく。

 

刑事告訴されたわけでもないジャニー喜多川が性犯罪者として非難され、広告主企業がジャニーズ事務所との契約を解除しているのは、MeTooの暴走による私刑」なのか?

*1:日本国憲法だってそうで、時代に合わせてメンテナンスする必要はある。だから護憲派って意味わかんないんだよね。永遠にあの憲法がもつと思ってんのか?9条をピンポイントで守るんなら護憲派じゃなくて護九派とかにしてほしいものだ。

*2:それでも断片的なお気持ちなどは共有できる。ロシアや中国とも文化レベルでは交流できているだろう。

井ノ原氏を見て感じた忖度論と、作品と人物は別論 追記

※このたび堂本光一氏についてデマを発信してしまったので訂正とお詫びの記事を出しました。

shin-fedor.hatenablog.com

 

 

 

忖度は急にはなくせない

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ジャニーズの会見で、井ノ原快彦氏の態度が素晴らしいということで株が上がりまくっているね。

 

1個挙げると、松谷創一郎氏が「メディアによるジャニーズへの忖度」に言及した際のこと。東山氏は「もちろんそんなことは求めません」と発言した。この言質は大変重要なのだが、しかし実はこれだけではちょっと消化不良な回答ではある。

 

このときの井ノ原氏が良かった。

 

「もちろん変えていきたい。でも、忖度というのは、そんな急に無くせるものではない。皆さんの協力も必要だし、時間もかかる」

 

という旨の回答を返したのだ。どういうことか?わかりやすい回答なので余計な解説は不要かもしれないが、一応噛み砕いて整理すると、

 

  1. 忖度というのは、上の人間を恐れる下の人間が「上の人はこう望んでるに違いない」と勝手に想像して行うものである。
  2. そのため、忖度される側が「じゃあ今からやめましょう。やめてくださいね」と言ったところで、やめられるものではない。
  3. 下の人間はそんな言葉を聞いても半信半疑だし、「口ではこう言ってるが、そうはいっても忖度しないと関係が悪化するのではないか?」「結局忖度した方が喜んでくれるし、関係も良くなるし、便宜を図ってくれるのではないか?」と考え、「念のため」に忖度を続ける。
  4. この状況はすぐには改善できない。長い時間をかけてコミュニケーションし、お互いの信頼関係を変化させることでしか実現できない。

といったところか。

 

忖度の厄介なところは、上の人間が「そんなこと命じてませんが?こいつが勝手にやっただけ」と言えてしまうところ。でも実際プレッシャーはあるわけだ。

 

Mステの皇達也プロデューサーが週刊新潮のインタビューで語っていた話。

 

皇Pが、非ジャニーズ系の男性グループをMステに出演させられるかどうか、ジャニー喜多川に探りを入れたところ、ジャニーは

 

「素晴らしいね。ぜひ出演させたらいい。ただ、被っちゃうから、もううちの子たちは出さない方がいいね

 

と言ったのだそうだ。

 

これ、言葉の上っ面だけ見たら、「素晴らしい。ぜひ出演させたらいい」と言っており、「出演させるな」とは一言も言ってないわけ。むしろぜひ出せと言っている。でも、ジャニーズタレントを全部引き上げさせると言われたら、皇Pから見たら脅迫されたも同然だよね。

 

これは、

「たしかに忖度しろとは一言も言ってないが、実質的には忖度せざるを得ないプレッシャーをかけている」

という状態なわけ。

※ツッコミがあったので訂正。これはまっすぐに「忖度を要求しているケース」、あるいは「事実上命令しているケース」でした。

 

というかそもそも忖度という言葉の定義上、常に忖度は「下の者が勝手に上の者のお心を慮って行うもの」なんだよ。

 

圧力をちらつかせて“自動忖度機”を大量生産するこのジャニーズ事務所のこうした方法論は、2019年7月にやっと表沙汰となった。

 

ジャニー氏の死去から8日後、公正取引委員会ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対し、SMAPの3人を「出演させないよう圧力をかけていた疑いがある」として「注意」をした。

朝日新聞GLOBE+より)

*1

*2

である以上は、上の者であるジャニーズ事務所が、マスメディアに対して「対等な取引先に過ぎない」という態度を取り続け、マスメディアの信頼を獲得することでしか忖度は無くせないんだ。

 

  • 東山さんの言葉に安心して非ジャニーズタレントや脱退タレントを起用したら、ジャニーズさんの不興を買ってしまうかもしれない。
  • ウチだけバカ正直に忖度をやめても、ライバル局は忖度を続けて優遇されるかもしれない。
  • そんなのは嫌だ、機嫌を取りたい。

 

こういう心の働きが、メディア側にはどうしてもしばらくは残るよ。*3あんなに強大な権力を振るったジャニーズさんが「これからは忖度なしでいきましょう」「うちに何か問題があったら報じてください」「脱退タレントと共演OKです」と言ったからって、メディア側はそれをただちに鵜呑みにするわけにはいかない。探り探りというか、おっかなびっくりでしょう。

 

これを踏まえているからこその井ノ原氏の満点回答だった。そう、そんなスパーンと「なくしましょう」「せやな」で無くせるようなもんじゃないのだ。そんなんだったら誰も苦労はしない。「できらぁ!」と即答してしまうのは無責任な態度だ。

 

長年権勢を振るってきたジャニーズ帝国が、「本当に変わったのだ」とメディアが納得できるまで、忖度はどうしても続いていく。それはそれとして認めつつ、でも変えていく意思があることを、「忖度される側」のジャニーズの幹部である井ノ原氏が、腹を割って率直に発信したのが大きい。

 

井ノ原氏の率直さは、メディア側から見ても「本当に変える気があるんだ」「時間はかかっても変わっていくのかな」と思わせるものだったのではないだろうか。その場しのぎの安易な綺麗事ではない、現実的かつ誠実な回答だったように思う。すぐ簡単に断言する人って信頼しづらいもんな。

ちなみにジャニー氏メリー氏の代理人としてメディアコントロール全般を担っていた白波瀬傑副社長は、会見に出るわけにもいなかったのか、会見の直前に辞職したらしい。そうする事で自ら過去の圧政の罪を一身に引き受けたと見れないこともなく、いずれにせよメディア側の心理的安全性は向上しそうだ。

 

東山紀之が降板の「サンデーLIVE!!」、「ジャニーズ事務所会見」を報道せず…野上慎平アナ「いろいろありましたけれども…最後までご視聴ありがとうございました」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

井ノ原氏が「忖度というのはそんな急には無くせない、皆さんの協力も必要だし時間もかかる」と言っていた通りかな。ジャニーズそのものに対する忖度だけでなく、社内の権力関係から探り探り変えていくしかないのかと

2023/09/10 19:52

b.hatena.ne.jp

 

それに、直接「対ジャニーズ」での忖度だけじゃないんだよね。メディア社内での忖度もある。「ジャニーズと親しいA部長を怒らせないように、安全運転で会見はスルーしておこう」みたいな社内忖度も複雑に絡み合うはずだ。

 

A部長はジャニーズの真意を図ろうとするだろうし、現場のディレクターはA部長の真意を図ろうとするだろう。しばらくはそういうことが続く。

 

※ここから追記※

この「A部長」という発想がどこから出たんだという話だが、これも会見で井ノ原氏が

 

「多分、(メディア側の)ちょっと古いタイプの社員の方が、昔ジャニーやメリーに言われた事をずっと守り続けてしまっているんだと思います」

 

みたいなことを言ってたんだよね。これも良くて、つまりメディア社にかかった呪いを解くための助け舟になる発言なんですよ。

 

井ノ原さんにこう言われたら、メディア社内に実際にいるであろう「ジャニーズへの忖度を他の社員にも強要する古い社員」はトーンダウンするし、他の心ある社員たちにも勇気が出てくるでしょ。いちいち気配りに抜かりがないんだよ。本当にスマート。アイドル以外の何の仕事やっててもめちゃくちゃ有能なタイプだと思う。

※追記ここまで※

 

ところで近年「忖度」というキーワードが注目されるようになったのは、森友事件のときだろう。俺も当時記事を書いた。

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

忖度は「される側」である権力者が極力気を遣って、「自分への忖度」が発生しないように心理的安全性を作るしかないんだよ。これは職場でも家庭でもなんでもそう。

 

はてなじゃ嫌われ者の橋下徹氏が、この時は良いことを言っていた。ので上記記事では記録として残しておいた。*4

 

作品と人物は切り離せないこともあるだろ

別記事にしてもいいんだけどこれもメモ代わりにまとめて書いとく。忖度の話は終わりです。

 

今回はそんなにフォーカスされてないけど、芸能人の不祥事があると出てくるのが「作品に罪はない」という議論である。

 

「作品と作者は別物だろう」

「演者の人格と演技の良し悪しは別物だろう」

 

その通りっぽく思えるが、これはいわゆる二択の罠なのだ。別物と割り切れるケースと割り切れないケースが、誰にでもあるはずだ。人物と作品はある程度別物だし、ある程度地続きだ。めっちゃグラデーションだし、同じ人の中でもケースによって全然変わって当たり前なわけ。「たいていは割り切れるけど今回は無理」ということ。

 

清純派として売っていた酒井法子がシャブを決めて逮捕されたら、イメージガタ落ちだし、白いクスリとか揶揄され、のりピーが今後紅白歌合戦で歌うことは想像しにくい。世間のイメージは「シャブ」で上書きされてしまった。「ひとつ屋根の下」の再放送も厳しい。作品と演者は別物と割り切れない人が多く出るのではないか。

 

しかしポール・マッカートニーデヴィッド・ボウイがクスリで逮捕歴あることなんて、ほとんど誰も気にしてないだろう。それは彼らの属性がロックミュージシャンであり、外国人だからだ。日本の清純派アイドルとはダメージが段違いなのである。

 

チェブラーシカの作者の名前を冠した児童文学賞が設立されることになったとき、作者の娘が反対の声明を出して話題になった。以下引用する。

 

敬愛するマリア・ヴェデニャピナ様!

ロシア国立子ども図書館が、私の父エドゥアルド・ウスペンスキーの名を賞に冠するつもりだと知りました。賞に父の名をつけることに大きな悲しみと遺憾の意を表します。

 

国家的な賞の名となる人物というのは、なによりもまず、善良で道徳的でなければならないと考えます……。私の父は生前ずっと家庭内暴力をふるっていた非常に残酷な人でした。それが彼の家族に対する基本的な接し方だったのです……。

 

暴力は、肉体的、精神的なもので、娘である私や妻である私の母に対して、孫たちや再婚した妻(有名なテレビ司会者のエレオノラ・フィリナ)の子供たちに対して恒常的に繰り返されていました。

 

不幸にも、この乱暴で恥知らずな行為が、支配と強要が、常に彼の人生のノルマになっていたのです……。それでも、テレビの撮影クルーがやって来るとなると、孫たちを招いて、偉大な作家の幸福な家庭像を演出しなければならない。それで見せかけの平穏な生活を装うということもノルマになっていました。

 

飲酒のことも含め自分の問題をわかっていた父は、きちんとした医師のところへは行かずに、ストルブン(破壊的な全体主義セクトの創設者、ヴィクトル・ストルブンのこと)の宗教セクトを信奉していて、彼の「治療」を受け、このセクトを経済的に支援していました。父は、このセクト子供たちに制裁を加えていることを知っていましたが、そのことで躊躇することはありませんでした。彼はストルブンとそのメソッドにぞっこんで、知人や友人たちも連れていっていたのです。

 

創造的なアイデアで人びとを魅了することのできる、間違いなく才能ある人物でありながら、父は自分の人間としての欠陥を克服することはできず、他人に好意的に穏やかに接するということもできなかったのです。

 

私の意見が聞き入れられることを願っています……。

 

子供たちも含め、自分の家族に長年にわたって暴力をふるってきた人物の名は、児童文学のような人道的な分野の賞に付されるべきではないと考えます……。

 

敬具
タチヤーナ・ウスペンスカヤ

 

クーリエ・ジャポンより)

 

これ知った上で「チェブラーシカを前のようには楽しめなくなった」という人もいるだろう。特に自分がDV被害者だったりしたら辛くなりそうだ。こういうことは世の中には溢れ返っているんだよ。

 

それに対して「は?なんで?作品の素晴らしさは全く変わらないじゃん」というのは簡単だけど、そう言ってる人は、その不祥事なりマイナス属性なりが、たまたま「俺にとってわりとどうでもいいこと」だっただけだったりせんか?

 

良くも悪くも(良くも大事!*5)、背景知識が増える事で、作品への感じ方が変わるのは当たり前なのだ。

 

俺は基本的には「作品は別と割り切ってる」タイプで、好きなアーティストだけど人間としてはクソやなというのはたくさんある。新井浩文はもう復帰してほしくないけど、彼が出ていた大河(真田丸とか)を見るときはけっこう切り離して見れている。が、新井浩文が出ているだけで過去作品も全部無理!という人がいるのは全然理解できるよ。

 

渥美清のお子さんが父のDVを告白していたのもショックだった。知りとうなかった。が、俺の脳はここも切り離してくれる。寅さんは寅さんであって、田所康雄氏とは別だ。が、DV被害者が「もう寅さん見れない」というならそれは全然理解できるよ。

 

さっきののりピーの話じゃないが、作風や芸風にもよるよな。家族愛を売り物にしたドラマの優しいパパ役がDV発覚するのはきついわけで。君への永遠の愛を誓う歌で知られるシンガーがしょっちゅう未成年相手に不倫ばかりしてたら、感動的な歌詞も気持ち悪く感じるようになってしまう。*6

 

フィル・スペクターが邪悪な殺人犯だからといって、音楽史に残る名曲・名盤の数々を全部廃盤にするのは現実的ではない。

 

人間の脳はこういったものを、ご都合やお気持ちに合わせて仕分けしてくれる。誰もが罪と功績の軽重を無意識に天秤にかけている。脳さんにも限度というものがあるが。

 

思考実験として、ものすごく極端な例を想像してほしい。ある素行不良な役者がいたとして、その素行不良のレベルをいろいろ調整して想像してみよう。

 

・ヘロイン所持で逮捕

・酔っ払って店員を暴行して逮捕

・マネージャーへの性加害発覚

・生放送中に司会者を射殺

・貴方の目の前で貴方の親族・友人を皆殺し

 

上の三つぐらいは「作品は別じゃん」と強がれる人も、真ん中へんから「さすがにきついっす」となるのではないか?もちろんこんなもんは極論だけど、地続きではある。「別物と常に言い切れるわけではない」ということは言えるんじゃない?

 

ので、あんまり二択の議論にして「俺はこっち派」みたいにポジション取るのは不毛なのではないかと思っている。「さすがに今回のは無理っす」と言える方が自然だし、健全ではないか。

 

だいたい「もう無理っす」って言ってる人だって、別に「常に作品と人物を同一視している」わけじゃねえだろうよ。たいていの作品では「別」と切り分けてるけど、「これはさすがに無理っす」という閾値を超えてしまってるだけだ。

 

ブコメへの感想

・それは普通に「忖度を要求」しているケースなのでは?

・「忖度を要求」じゃなくて、もはやストレートに命令しているケースなのでは?

それはそうやな!上記の両者は言ってることは異なるが、どちらも合ってると思う(確実に俺よりは合ってる)。ぐうの音も出ねえ。俺どうかしてたのかな?

 

書き直すかどうかちょっと考えるが、ちょっと俺がバグった背景というか、意図を説明しとくと、今って「事実上○○」を「○○」と認識しない人が多いと思うんだよ。

例えば交渉決裂したときに「アンタそういえばお嬢さんいるんだって?高校生なんだね、可愛いだろうねえ」とか言うのは、俺らの感覚では「娘に害を加えられたくなければ言うことを聞け」という、事実上脅迫じゃん。でも最近って「お嬢さんを可愛いだろうねって言っただけじゃん?」と解釈する奴が多い、めっちゃローコンテクストな世の中になってない?

例えば森友のとき、安倍さんが「役人が大臣に忖度することなどあり得ない、官僚への侮辱だ」と言い出して「安倍さんやっぱアホなんかな、忖度の意味わかってんのか?」と思ってたら、芸能人とかヤフコメとか世間的には「そうだそうだ、安倍さんの言う通り」って同意する反応が多かったんだよ。

安倍さんがああいう強い言葉を使うときって、多分「自分にまったく心当たりがないとき」なんだよね。自分や妻が財務省の値引きに関わってたら議員辞職すると言ったときも、「自分に心当たりがない」故に、辞職なんていう強い言葉を使ったんだ。

つまり、安倍さんは「俺は役人に忖度を強要した記憶がないなあ。ということは、役人の忖度など絶対にない」という思考をしたと考えられる。そしてその安倍さんの発言を世間の多くの人が支持した。

「あれ?もしかして今って、露骨に、直接的なやり取りがないと、世間的には忖度と認識されないのか?」「忖度の意味とは?」ってなったんだよね。これ、今ってもうめっちゃローコンテクストな表現じゃないと「事実上○○」は通用しないんちゃうかなと。

 

・あれは全部台本があった

マジかよ俺ピュアすぎんな。いや、当然「弁護士と相談して用意しておいた想定問答」はあったんだろうとは思うが(例えば性加害を知っていたかどうかについて、変な言質を取られないように)、事前に質問通告なんかしてないだろ。してたらあの魑魅魍魎のような記者たちの誰かがバラすわ。それに台本あるにしてはジュリー氏の発言支離滅裂だったぞ。

 

ブコメへの感想2

・皇に対するジャニーの発言は、売り言葉に買い言葉?

いやー、皇さんはジャニーの完全な子分らしいので、喧嘩なんか売るわけないよ。

多分、「最近大人気の、非ジャニーズの男性グループをMステに出すかどうか」がテレ朝で議題に上がったとき、ジャニーに内緒でこっそりブッキングしたらジャニー&メリーが激怒してテレ朝を滅ぼされるから、巫女役の皇氏がおそるおそる事前にお伺いを立ててみたんじゃないの。

 

・井ノ原氏の演技に騙されてる

マジかよ俺チョロすぎんな。けっこう記者からの思いがけない質問にもしっかり真面目に答えてるように見えたけどなぁ。あのコミュ力と安定感凄いと思うよ。まあ詐欺師もコミュ力と安定感凄いのかもしれんけど。ああいうボスの下で働きたいね!

 

・白波瀬がいないのはいかんでしょ

これは文春の編集長インタビュー見て、俺も「いなきゃダメだったんでは」という感想に傾いた。

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でもきっと白波瀬&顧問弁護士に会見させるの、クリティカルすぎるんだと思うんだよな。クリティカルすぎるからこそ逃しちゃダメでしょという話なのはそう。そらそうよ。そういうアレよ。

 

・どうなったら忖度が解消されたといえるのか?

これは人それぞれの感じ方だからなあ。決まった基準なんかないでしょ。

俺はMステなどの歌番組に非ジャニーズの男子グループ(SKY-HI氏の会社の子たちとか)がバンバン出るようになったら、紅白やCMの異常なまでのジャニーズ率が下がってもうちょい多様性が出てきたら、新しい地図がキムタクや中居くんや森くんとハイタッチしてたら、各局がプレデター ジャニー喜多川の悪夢と日本メディアの罪」みたいな特番をやるようになったら、「ああ、随分良くなったんちゃう」と感じると思うよ。

 

・きついきつくないの問題じゃなく、作品を発禁したりするなという話

それはそう。

特にサブスク系はマジで困る。瀧が捕まった途端に電気の音源がSpotifyでもApple Musicでも聴けなくなって、「ああ、やっぱ大事な音源は円盤も手元に残してた方がいいな」と思うようになった。

クリス・ベノワが妻子を殺して自殺したとき(俺のプロレスファン人生の中であれ以上の衝撃はなかった)、WWEはベノワの名前をあらゆる記録から抹消し、映像作品からも一度削除したが、その後緩和して、過去記録・映像としては閲覧参照できるようになった。

元ロッテの小川博が年配の女性から金を奪った挙げ句川に投げ込んで殺した事件があったが、それが理由で10.19伝説のダブルヘッダーの映像を流せなくなるなんてことは野球ファンからしたら損失だ。

よって、「発売するな!」「放送するな!」というのには俺も反対するものである。フィル・スペクターについての言及はそういう話でもある。

じゃあ俺が何が言いたかったかというと、「は?なんで?作品と作者関係なくない?」という議論に対して「関係ないことはないだろ」ということが言いたかったのだ。

*1:もちろん露骨に「新しい地図を使うな!」とはさすがに言わなかったはず。(メリーさん言ってそうだけど、メディアには白波瀬さんや広報が対応したろうし)

*2:そういや俺がジャニーズへの「忖度」を最初に目の当たりにしたのは「稲垣メンバー」の件だったな。

*3:というか、もちろん「完全になくす」ことは不可能だ。忖度は誰にでもどこにでもある自然な心理である。ワイもクライアントや妻やブクマカに忖度しまくってるで!

*4:橋下氏にもクソなところいっぱいあるよ。ウクライナ関連ではコイツどうしようもねえなと思わされたし。まあ是々非々で。

*5:だってアーティストや作家の人格も含めてファンになってる事あるでしょ?

*6:思い出したから追記。田中秀和ケロちゃんじゃない方)もこのパターンや。

「脚を露出していたので声をかけた」…「ウマ娘」作曲家「『好みのタイプ』の少女」へのわいせつ行為(FRIDAY) - Yahoo!ニュース 「田中被告が楽曲を手がける『アイドルマスター』は10代の女性アイドルがメインキャラクターで、アニメ『アイカツ!』は小学生女児をターゲットにしています。少女への犯行は、あまりにも印象が悪い。今後、多くの作品で田中被告の楽曲が使用できなくなる可能性があるんです」

ジャニーズ会見後の雑感と、ブコメへの感想。そして改めてブランド名温存について ※訂正とお詫びあり

※9/11訂正とお詫び

堂本光一氏のブログについて、Show Must Go On!は記事タイトルではなく、元からこのブログタイトルでした。「このタイミングでジャニー氏のモットーであるShow Must Go On!というワードを発した」というのは事実誤認でした。誠に申し訳ない……。訂正しました。

東京新聞の読者を一絡げで叩くなというご指摘をいただいた。それはそう。当事者の会に対する態度など、「東京新聞はいつまで望月記者を増長させとくんだ」というフラストレーションがあり、望月憎けりゃ読者まで憎い状態で筆が滑りました。失礼すぎました。撤回します。

・以上2点、お詫びいたします。

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

 

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

先日書いた記事をブクマしてくれたブクマカサンキュー。

 

その後会見が行われて、メディアや広告主など取引先企業たちにも動きがあった。いろいろメモしておきたい。

 

会見全体について雑感

・井ノ原氏のスマートさ

これは大きかった。井ノ原氏の存在がかなりの救いになっていた。ジュリー社長は悲劇のヒロインのようだし、東山氏も芝居がかっていて、正直井ノ原氏がいなかったら100倍いたたまれない会見になっていたのではないか。もともと好印象だったが、賢いし誠実な人で、彼がトップにいるならいろいろ改善されていきそうという感じはした。

 

気になる点として「毎日話してます。毎日良くしようと言ってます」の、多分相談してる相手は幹部でもなんでもない若手社員とか若手アイドルとかだよね?東山氏やジュリー氏や幹部社員、ベテランタレントとは話してないよね?それはあまりに悠長な話で、危機意識が足りてないんじゃないかな……。

 

また、

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「噂は聞いたことがあった」は井ノ原氏に限らず、所属タレントや社員の精一杯の発言だろう。北氏や木山氏の暴露本、文春との裁判など、誰でもアクセスできる情報として性加害の事実はあったので、井ノ原氏ぐらい賢い人が「そんなわけあるか?」という気持ちもある。しかしここは暗黙の了解で、「さすがに把握していたとは言えない、このぐらいで勘弁してくれ」という感じはあるのかなと。

 

「ただ、被害に遭われた方が相談に乗ってくるとか、そういうことができない空気はあったと思います」

 

過去は変えられないので仕方ないとして、今は「相談できる空気」があるのか?それを知りたい。後述の木村拓哉堂本光一のメッセージを見たら、社内は「あ、やっぱり会社としてはジャニーさんを守るんだ」「ジャニーさん神様だもんな」という空気になり、とてもじゃないけど相談できる心理的安全性なんか生まれないんじゃないの?

 

・記者たちの質問。松谷創一郎氏のミッション達成

マスメディアは全く頼りにならないのはわかっていたことで、個人記者みたいな人たちがクリティカルな質問を担当していた。

 

松谷創一郎氏は明らかに「この言質だけは絶対に取る」という強い思いであの場に立っていたと思う。そのミッションは「ジャニーズ帝国への、マスメディアの忖度をやめさせること」

 

ジャニーズ事務所に不都合な報道は一切しない。

②ジャニーズと競合する男性タレントや、退所した裏切り者を番組に出さない。

 

これを、東山氏の口から「もちろん、そんなことは求めません」と言わせたのは大きかった。今、ここでメディアとジャニーズを健全化できなかったら日本社会の大敗北である。この言質を取れただけでも松谷さんの果たした役割は本当に大きい。他社タレントの名前を挙げたのは勇み足だが。

 

なぜならジャニーズ事務所も、メディアも、広告主も、ファンも、「あわよくば謝罪だけで済ませたい」「今まで通りの関係をなあなあで続けたい」と思っていたところに、「それはダメだよね」と切り込み、諦めさせることができたからだ。

 

MeTooについてもそうだし、芸能事務所の圧力とメディアの不健全な関係についてもそうだが、この一件はまさに「千載一遇の好機」なんだよ。あの絶大な権力を持つ無敵のカリスマ・ジャニー喜多川ですら討ち取れたなら、他の性加害者や芸能事務所も震え上がる。逆に、これまで性搾取されてきたタレントや芸能事務所従業員などは、「泣き寝入りしなくていいんだ」とこの上なく勇気づけられるはずだ。何度も書いたが勇気の連鎖がMeTooの本質。*1

 

メディア各社では、金を稼ぐことができる芸能担当者の発言力が大きいのだろう。報道だろうとなんだろうと、「○○事務所さんの悪い話なんか書けるわけないでしょ」とさまざまな悪行が握りつぶされてきたことは想像に難くない。ジャニーズに限らず。

 

あの天下のジャニーズがけじめを取らされることになれば、このメディア企業内のパワーバランスは絶対に変わる。今は、各社のジャニ担も、上層部も、「ジャニーズの件はどうなる?」と固唾をのんで見守っていることだろう。「もしジャニーズさえ討たれるなら、今後はコンプライアンスを真面目に考えなければ」ということに、絶対なる。良心のあるメディア社員たちが「ジャニーズを見たでしょう、もうそういう時代じゃないんですよ」といえるように必ずなる。

b.hatena.ne.jp

 

※忖度について別記事を書きました。

 

しかし、会見に話を戻すと、このメディアの忖度について話してるとき、松谷氏の発言に対してジュリー氏が顔をしかめたり首をかしげたりしていたように見えた。単語で言うなら「不興」の二文字だ。どういうことか?「忖度なんかされてない」と本気で思っているピュアなお嬢様なのだろうか?*2

 

次に、俺が一番心配していた(前記事参照)、「ジャニーズ」というブランド名についてだが、本間龍氏が一応ツッコミを入れてくれた。「ヒトラー株式会社みたいなもの」という例えが適切かどうかはちょっと微妙かもしれない。汚名というのはあるんだけど、あくまでも文脈が大事なので。仮にどこかの不謹慎な奴が「ヒトラー○○」を名乗ったとして、まあ悪趣味だし批判されるだろうが、それだけなら意味合いとしては軽すぎる。つまり、ジャニーズ事務所や所属タレントが

「俺たちはジャニーさんの想いをこれからも永遠に受け継いでいきます」

というシグナルを、社内外に送ってしまうのが最大の問題なのだ。ジャニー喜多川という鬼畜への未練と決別して未来に進む覚悟を決めようよって話だ。これについては後ほど、キムタク堂本光一の話で触れる。

 

最後に一応、望月衣塑子氏はあの場で場違いな演説を始めたり、「新聞記者」的なトーンで東山・井ノ原にアウティングを求めるなど相変わらずのモンスターぶりだったが、貴様はとっとと赤木夫人に土下座して資料を返却しろ。かつてあんなもんを持ち上げてた人たちは猛省してくれ。東京新聞なんか取ってる人は、心から恥ずかしいと思ってほしい。*3

 

ただ、東山新社長の「SMAPへ」記載のセクハラ疑惑を聞いたのもこの人なんだよな……。

 

会見後のあれこれについて雑感

・若手タレントの意思表明は観測気球的な意味合いもあるのかも?

東山氏にも性加害疑惑、ジャニーズ事務所新社長に就任も批判や疑問の声 - BBCニュース

ジャニーズWEST中間淳太氏「すごく驚いた。外部の人間を雇用するべきだと思った。親族経営が問題であったとするなら、親族じゃないけど、身内は身内じゃないですか」これを言えるんだ。若いタレントの方がまとも。

2023/09/08 22:00

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会見後、ジャニーズWEST中間淳太氏、A.B.CーZの河合郁人氏といったタレントが、それぞれのレギュラー番組などでコメントを出していた。

 

これはポジティブ材料で、「一切喋るな、触れるな」といった指示は少なくとも社内では出ていないのだと思う。二人とも35歳ということで、ジャニーズアイドルとしては中堅か、もしくは今どきならまだ若手の範疇に入るのかもしれない。「だから影響力が小さい」ということでゴーサインが出ているのか、それとも井ノ原氏らが頑張って「自分の気持ちを発信させてあげよう」という方針になってるのかはわからない。後者だと良いのだけど。

 

上記の二人とも「被害者の気持ちを思うと社名は変えた方がいいと思うが、ファンのために残したい気持ちがある」という旨の発言している。社名変更については俺は前の記事で書いた通りの意見なので、もしタレントの発言を事務所が観測気球に使おうとしているのなら、やはり変えるべきだと重ねて主張しておく。

 

・ジャニーズファンの反応。事務所側が呼びかけるべきでは。

 

だけどたしかにね、ファンはね。河合氏も言っているように、思い入れがあるから変えたくないんだろう。しかし、同時に「じゃあファンはジャニーの性加害を知って、どう思ってるの?」という疑問はどうしても出てくるが。

 

ジャニーズ問題 メディアに問われるのは「沈黙」ではなく「取引」ではないか(鎮目博道) - エキスパート - Yahoo!ニュース

人間として見ていないのはファンもだよ。先週なにわ男子の西畑氏が熱愛発覚炎上した際、喜多川の「プロなら恋愛するな」発言を引用して「ジャニさんの言葉を肝に銘じてね」というファンのPostが1万いいねされていた。

2023/08/31 11:12

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元Jr.が実名告発する合宿所の“驚愕事態”「単純計算しても2500人以上が犠牲に…」|ジャニー喜多川氏「性加害」半世紀の真実

男闘呼組「色々言われているが俺達は名前をくれたジャニーズに誇りを持っている。皆も事務所応援して」キンプリ「ジャニさんごめんね!目標届かなかった」ジャニオタ「ジャニさんは褒めてくれるよ!」この流れオエエ

2023/05/27 19:23

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ジャニー氏性加害“誰も止められなかった”構造とは 「マスメディアの沈黙」指摘重く受け止め 日本テレビもコメント

X見てたら「売れないジュニアの売名で社長が退陣なんて狂ってる」「私たちはジャニさんの味方です」みたいなツイートがアホほどいいねされてて、俺が狂いそうだよ。推しタレントを「人間扱い」してないファン。

2023/08/30 21:12

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今、この時期に「ジャニさんの~」とか無邪気に言ってるファンが超いっぱいいるんだよ。それはタレントがそうだからだよね。

 

タレントたちが「ジャニーさん」をはっきりと否定しない限りは、忠実なファンたちも「ジャニーさん」の味方みたいな気持ちになるしかないのではないか。

 

正直「ファン側の気持ち」も、わからないではないんだよ。以下の記事は、違和感のない分析だった。まあ、わかるよって感じ。

 

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というわけで、ジャニーズ事務所には、ファンに対して、被害者を中傷しないようにアナウンスしてほしい。あんな沈痛な表情で被害者を思い遣っていながら、ファンの暴走はそのままにしとくなんておかしいのでは。

 

結局、事務所名の温存はファンに対しても間違ったシグナルになる。

 

あとは陰謀論ね。

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この数週間、しょっちゅうXのトレンドにジャニーズ関連のキーワードが上がってくるのだが、「話題のPost」として上の方に表示されるのは陰謀論系のものが非常に多い。それで数万いいねとかされてる。

ざっくりまとめると、

 

「いつものパヨク勢力が、KPOPで日本を侵略するために、日本の誇るジャニーズ事務所に言いがかりを付けている」

 

的なやつだ。陰謀論者はいつもの人たちであっても、それをジャニーズファンが「真実はこういうことみたいです」「当事者の会の背後には韓国や左翼団体がいるんだそうです」と必死に拡散してしまっている。地獄みたいな光景だ。

 

・Show Must Go On!の件。ベテランタレントのジャニーイズム

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一方でベテラン勢だが、木村拓哉Instagram堂本光一がブログで「Show Must Go On!」というメッセージを発した。これは死んだジャニー喜多川の好んでいた言葉で、「YOU、やっちゃいなよ」と並んでジャニーを象徴するフレーズなのだそうだ。

 

※追記お詫び:堂本氏のブログは最初からShow Must Go On!というタイトルなのだそうです。Show Must Go On!というワードがトレンドに上がってきた際「光一氏がジャニー氏への深い想いを語ったのに対し、ファンが一斉に光一氏やジャニー氏への感謝を伝える」といった状況を観測して、勘違いしてしまった。大変失礼しました……。>ブコメご指摘感謝

 

Show must go on自体は普通の慣用句であり、例えばQueenに同名の楽曲があったりするのだが、さすがにこのタイミングでベテランタレントが発するからには「俺たちはジャニーさんの想いをこれからも永遠に受け継いでいくぜ」という、後輩やファンへのメッセージにしかならんだろう。*4

 

Zはただのアルファベットでしかないが、国会議員がZマークのバッチ付けて国際会議に出てたらダメだろ?これが文脈ってこと。

 

「勝手にそんな文脈を読み取るな」という反論はあり得るが、悪いけど非常に弱いと思うよ。

 

そして、事務所の大ベテランがこうしたシグナルを後輩たちやファンに対して発するのは非常に危うい。

 

井ノ原さんは

 

「ただ、被害に遭われた方が相談に乗ってくるとか、そういうことができない空気はあったと思います」

 

こう語ったけど、木村拓哉があんなメッセージを出したら、今ジャニーズ内にいる被害者が、相談してこれるか?心理的安全性なくないか?

 

現役タレントの被害者がいたとして、

「木村さんや光一さんがああ言うってことは、会社に被害の相談なんかしたらとんでもない目に遭うんじゃないか?」

「ヒガシさんたちは会見ではしおらしくしてたけど、やっぱり社としてジャニーさんを守る方向なんだ」

と萎縮してしまうのではないか?

 

・メディアの無反省ぶり 

わかっちゃいたけど酷いね!

 

ほぼ全社横並びで「真摯に受け止めたい」「今後を注視したい」と。いつまで注視してんの?みんな揃って岸田総理かよ。つまり「何もしません、何も変えません」という事だろう。

 

俺が特に注目したいのはテレビ朝日ミュージックステーションはほとんどジャニーズステーションになってしまっている。*5

 

そもそも朝日グループのメディアは、おそらく「稼げるから」という理由でジャニ担が圧倒的な発言力を持っていたと思われる。「テレ朝と朝日新聞社は言うほど一枚岩じゃないよ」という話もあるが、ジャニーズについてはどちらも「ズブズブ」であろう。

 

 

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dot.asahi.com

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・広告主企業の反応

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残念ながら、メディア企業に自浄能力は期待できない。もちろん、メディア内にも「クソだよなあ」と思いながら、利益至上主義の上層部やジャニーズ担当に発言力で勝てない個人はたくさんいるはずなので、前述した通り社会の空気を変えて、パワーバランスをひっくり返す後押しを俺たちはすべきだが。

 

なんだかんだ言っても、メディア企業は広告主を最重視する。ジャニーズタレントを重用する理由だって、結局は視聴率が取れるから=広告枠が売れるからである。*6

 

さて、ジャニーズの会見を受けて、日本航空東京海上保険、キリンホールディングス、アサヒグループといった企業が、次々とジャニーズとのCM契約解除や、契約更新しない旨を発表した。

 

当然、怒りのジャニーズファンから反発とか不買運動などが巻き起こっているが、これ、今どきのまともな上場企業やグローバル企業だったら、もう自動的にそうならざるを得ないんだよ。

 

メディア企業や芸能企業は特殊なので、このあたりの感覚がわからんのかもしれない。あるいは普通の社会人でも部署によってはわからんのかな。

 

温度差はあるだろうが、経営者直属のCSR系部署を筆頭に、広報・PR系部署や、法務系、そしてマーケティング系の部署の人間なら「それは、一回契約を切るしかない」と判断するのはわかるはずだ。

 

おなじみの斗比主閲子さんがこの辺りについて触れていた。

 

topisyu.hatenablog.com

 

つまり、「人権侵害が明らかになった企業とは取引できない」のだ。もし取引先の人権侵害が明らかになったなら、いったん取引を中止し、透明性の高い現状報告や、改善策を求める必要がある。

 

例として、キリンホールディングスの人権DDについて。

www.kirinholdings.com

 

アサヒグループはこんな感じ。

www.asahigroup-holdings.com

 

日本航空

www.jal.com

 

東京海上

www.tokiomarinehd.com

 

このような「企業の社会的責任」については、ここ10年ぐらいでようやく日本企業にも根付いてきた印象があったが、まだ浮足立っている企業もあるのが現実ではある。

 

「タレントに罪はない」というのも関係ないのだ。会社と会社の契約なのだから。

 

カカオ農場で働く児童に罪はないが、児童を虐待・搾取してる農場とは取引できない。タレントに罪はないとしても「人権侵害疑惑のある取引先企業とは、適切な情報開示と改善が示されるまで取引を中止する」は必要。

 

そういう意味では、アフラック「事務所を通さず、タレントと直接交渉および契約したい」と言い出したのは一つ注目ではある。実現すれば限りなくジャニーズ解体に近づくような気もするが。

 

そもそもジュリーさんが100%の株を保有し、ジュリーさんと家族のような付き合いのある東山さんが社長という体制では、取引先を納得させられるような改革は不可能なのではないか?

 

その他、ブコメへの感想

・ブランド名など本質ではない、変えるべきでないという意見

まあAという観点では本質であるし、Bという観点では確かに本質ではないよね。

 

こういう曖昧な言葉については、「俺は、今この場ではこういう意味で“本質”という言葉を使うね」という定義がないと正気の議論にならないのだった。

 

指摘してくれてる人たちは、

「ジュリー藤島が100%株主である限り、名前なんか変えても何も変わらない」

「名前を変えて禊が済んだなんてチョロすぎる、統一教会同様隠れ蓑にしかならない」

といったことを言いたいのだろう。

 

しかし「何も変わらない」ということは絶対にない。むしろ名前こそがこの問題の本質であり、名前を変えることでしか社会は変わらない。

 

「この問題」とは?ここの課題設定が違うんだろうね。俺はジャニーズ問題は「カリスマや権力者なら何をやってもいいという日本社会」の問題と捉えている。

 

俺が「日本社会が出直す好機」と書いたら、「主語がでけぇ、せいぜい芸能界だけの話だろ」「プロ驚き屋みたいな大仰な表現」といったブコメをいただいた。

 

俺は、そういう人たちはジャニーズを舐めすぎてると思う。ジャニーズなんて、なんなら日本社会に対して天皇家よりも影響力あるよ。

 

テレビを付ければジャニーズ。街を歩けばジャニーズ。電車に乗ればジャニーズ。コンビニ入ったらジャニーズだ。

 

日本社会には、

「権力者の悪事には異常に寛容だが、弱者には冷たい」

「性被害者の話をなるべく聞きたくない」

といった悪い空気があると俺は思ってるのね。それを覆す絶好機なんだよ。

 

ジャニーズの会見をよくよく聞くと、「頑張って変わっていきます」とふんわりした話しかしていない。目に見えて変える象徴的なアクションが一つもないわけ。何をどう変えるのか?何も変えたくないのではないか?

 

だからこそ各メディアも「真摯に受け止め、今後を注視する」というふんわりした反応をしたのだ。

 

できれば何も変えたくないジャニーズと、何も変わってほしくないメディアやファンの利害が一致した結果、あの虚無みたいな会見になったんだ。

 

ジャニーズの名前が変わるとなったら本当に天下がひっくり返る一大事だ。そうなれば、我々は社会活動のあらゆる場面で、ジャニーズに替わる新名称を使うことになる。その新名称を使うたびに、目にするたびに、耳にするたびに、ジャニー喜多川という鬼畜の栄誉は葬り去られたのだ」ということを、一人ひとりが意識せざるを得ないだろう。

 

ジャニ担、ジャニオタといった言葉も使われなくなる。メディア各社でジャニ担は発言力を削がれる。対ジャニーズだけでなく、メディア内に「芸能事務所の圧力を受け入れて人権侵害に加担しちゃダメなんだな」という空気が醸成される。少なくとも心あるメディア人たちが自信を持って発言できるようになる。芸能事務所内でも、「これはやめましょうよ」と心ある人たちが言いやすくなるよ。井ノ原さん的な人たちね。

 

俺が言いたいのは名前を舐めんなということで、鬼畜の名前を剥ぎ取ることは、

 

「権力者の悪事には異常に寛容だが、弱者には冷たい」

「性被害者の話をなるべく聞きたくない」

 

という日本人の意識を根本から変えるパワーがあるんだよってことだ。

 

権力者たちも「好き放題やったらまずい」と考えるようになる。被害者たちは勇気を持って告発できるようになるよ。傍観者たちも自信を持って被害者を助けられるようになる。それをやろうって話なんだが。

 

あと、目を疑うのが「もうジャニーズは死に体で、むしろこの名前のままでいることが十字架に~」という意見。いやいや!ネットしか見てないとジャニーズ四面楚歌に思えるかもしれんが、普通に街を歩いてみよう。家族や友人の意見を聞いてみよう。テレビを朝から晩まで見てみよう。

 

ジャニーズ最高!ジャニーズ最高!ジャニーズ最高!

 

マジでこれだよ。俺の周りの人たちも「ああ~、ジャニーさんのね。有名だったけどどこまで本当なんだろうね。タレントさんは悪くないのに可哀想だね」ぐらいの温度だよ。みんなジャニーズというブランドに未練タラタラなので、ちゃんとけじめを取らないと数ヶ月で「なかったこと」になるよ。マジでなるから。

 

「テレビ朝日やフジテレビは逃げないで」ジャニーズ性加害問題、NHK番組でコメンテーターが要望(亀松太郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

ジャニーズだけじゃない。五ノ井里奈さん、千葉美裸さん、桐貴清羽さん等のMeToo告発者をメディアが見殺しにした事が、権力ある性犯罪者どもを勇気付け、被害者には無力感と絶望感を与えてきた。ここは踏ん張りどころ

2023/05/18 09:17

b.hatena.ne.jp

園子温告発者を見捨てたはてブ民が揃って口拭ってて超笑える

"告発は無になり、白黒つかないまま全てが落ち着き、権力持ってる側の勝ちで確定するわけだ。告発した側一人一人には暗い未来が待ってるだろうな" これは俺も思ってたよ。結局メディアが助けなければmetooはそうなる。

2023/01/27 06:35

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【性加害問題】“実態を知ってほしい” ジャニーズ事務所 元所属タレントたちの声 - クローズアップ現代

事はジャニーズだけの問題ではない。日本で不発に終わってしまったMetooを再起動し、全ての性被害者とその予備軍に「泣き寝入りしなくても、告発すれば社会が支える」というメッセージを伝えるのがメディアの役目だろ

2023/05/18 08:47

b.hatena.ne.jp

元ジャニーズ「性的被害受けた」 カウアン・オカモトさんが会見:東京新聞 TOKYO Web

告発を不発にするたびに、性別問わず日本中の被害者に「ほらな、無駄だろ?」というメッセージ、加害者に「な、大丈夫だろ?」というメッセージを送る事になる。社会が「絶対に許さん」の意思を示す必要があるんだよ

2023/04/13 05:18

 

当事者の会の人たちには目に見える、不可逆の成果が必要なんだよ。

 

街頭アンケートでは9割の回答者が「ジャニーズの名前はこのままでいいと思います!」と答えてんだよ。「ジャニーさんのあれ、ああ~ばれちゃったか~って感じ」とかいう回答してる奴がいてさすがに笑ったわ。マジでそんなレベルだからな。

 

相当のショック療法がないと変わんないよ。そのショック療法がブランド名変更なんだってば。「変わりたくないよ~」という未練を木っ端微塵に打ち砕く効果があるの。

 

みんなが大好きで、思い入れのある「ジャニーズ」という屋号を葬ることで、「ああ、児童への性加害とか人権侵害ってダメなことだったんだ」と社会に自覚させる。

 

そのぐらいインパクトのあることなんだよ。「たかが屋号を書き換えたぐらいではただの目眩まし」という人は、ちょっと感覚が違いすぎる。

 

ジャニー喜多川氏の少年たちへの性加害疑惑 英BBC番組の制作者「沈黙の壁あった」:朝日新聞GLOBE+

”私たちが児童虐待だとみなしていることがセレブのゴシップとして扱われ、真剣に扱われていないこと" 本当になぜなんだろ?前に増田で書いてる奴いたけど。権力者から児童への性加害に本気で怒る勢力が国会にもいない

2023/03/18 08:56

b.hatena.ne.jp

 

BBC報道からこれまでの間、日本人の多くは「ジャニーによる性加害はあったのかもしれんけど、そんな騒がなくても……いいのかな?」といった受け止めをしていた。

 

要は価値観がバグっちゃってるんだよね。正常性バイアスというか。

 

でも冷静に考えたらおかしいでしょ?権力者が、長年に渡って児童*7に性加害を繰り返してきたことを、日本人みんなが知っていて、「でもなんか……いっか!」と許しちゃってんだよ。「男同士だしな」「みんなジャニさん慕ってるみたいだしな」とか。

 

本題じゃないから深くは触れないが、この正常性バイアスって近年の政治関係の負の遺産としてもあると思ってて、あまりにも自然かつ堂々と行われる悪事を目にすると、「あれ?別に普通なのかな?」って感覚が狂っていくの。

 

この、俺たちの狂った感覚を上書きする必要があるんだよ。

 

じゃなきゃ今後いかなる「権力者による性加害」が告発されたとしても、みんなジャニー喜多川を団結して逃した負い目があるから、ゴニョゴニョ言ってなあなあにしてしまう部分は絶対に出てくると思うよ。

 

「なんであれだけやらかしたジャニーですら逃したのに、こんな案件で騒ぐの?」

 

メディアも、一般人も、踏み込みが弱くなるよ。ハフポストの体たらくを見ていたらわかるわ。

 

日本社会全体が「やっぱり権力者による児童への性加害ってダメなんだ。そりゃそうだよね」という常識を、「空気」を、獲得できるんだよ。魔法が解けて、「冷静に考えたら、児童を数百人も性欲の捌け口にする権力者ってクズなのでは」となる。

 

ただ、「ジュリーが株式100%保有というのが本質」「株を手放せば社名も変わる」というブコメには一理あると思ったがね。結局、問題とされていた「親族経営」は事実上続行することになる。メディアはあの会見で全てを終わりにせず、そこを引き続き追及すべきではないか。

 

ジャニーズ事務所だけじゃないじゃん。他の、例えば女性アイドルは?

というブコメもあったね。俺はまったく異論はない。仰るとおり。他の事務所の悪行にも俺たちは声を挙げるだろう。

 

女性アイドルが性被害を告発できるような社会を作ろう。そのためにもジャニー喜多川の首を取ることが、大きな象徴的効果を持つよねって話なんだよ。

 

「もっと関心を」香港の民主活動家 日本に協力呼びかけ | NHKニュース

a問題に取り組んでる人に「なんでbは無視?」とやり始めると全人類が世界の全問題に全力コミットするか逆に全てを放置するしかなくなるので、皆それぞれ自分の興味関心事にコミットしよう。いちいち他を腐す必要ない

2020/06/10 13:02

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環境活動少女グレタはなぜ中国を批判しないのかと話題に CO2排出量は米国の約2倍、日本の8倍 : 痛いニュース(ノ∀`)

じゃあ中国の環境破壊は!?と思った人が中国を批判すればいいのよ。ある問題に対して何かをしている人に「Aだけなの?Bは?」と詰めるのは不毛。Aのことはよく知らんが、Bに詳しい俺やお前がBをやろうじゃないか。

2019/12/13 08:23

b.hatena.ne.jp

 

別に仁藤夢乃さんがホストについて熱量がなかったりしてもいいんだよ。そんなもんはホストが問題だと思ってる人たちが担当すればいい。みんな自分がコミットしたいと感じたことにコミットせよ。

 

追記・もちろん「表現の自由戦士はエロの自由にしか興味ないのか」みたいなのもクソだからな。そのクソ論法をやめろと言っている。

 

・死人をどうやって裁くの?被害者であるタレントに迷惑かかるだけじゃん

ジャニーズ事務所、ブランド名を温存について(9/8追記) - はてブの出来事

この記事の最後に書いておいたよ

 

 

9/14追記

メディアからも自己総括の動きが少し出てきた。NHKのクロ現

www.nhk.or.jp

www.nhk.or.jp

*1:前回記事も参照ください

ジャニーズ事務所、ブランド名を温存について(9/8追記) - はてブの出来事

*2:それとも松谷氏の発言がカメラの前で言ってはならないタブーすぎたのか?

*3:望月記者がパフォーマンスするたびに望月記者にばかり話題を持っていかれるのは良くないとも感じた。なぜ質問者Aでいられないのだろうか。「望月のくだらんパフォーマンスは黙殺する」という空気が醸成されてほしい。

*4:「そんなことないでしょ」と思った人はXに行ってファンの反応見てきてくれ。ファンはそう受け取ってるから。「ありがとう!アンチに負けずにジャニさんの大事な会社を守りましょうね!」ってなってんだぜ。

*5:ジャニーズによるテレビ局への干渉については、ジャニー喜多川の子分のような存在だったらしいMステの皇達也プロデューサーが、新潮の記事で語っていた。「うち以外の男性アイドル?ぜひ出演させたらいい。ただ、被っちゃうから、うちの子はもう出さない方がいいね」と脅されたと。

*6:NHK?おかしいですね……。

*7:服部さんや松崎さんがおそらく最年少だが、下は8歳からだよ。8歳の子供が数十回、性加害された。

ジャニーズ事務所、ブランド名を温存について(9/8追記)

※このたび堂本光一氏についてデマを発信してしまったので訂正とお詫びの記事を出しました。

shin-fedor.hatenablog.com

 

 

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これはあってはならないだろう。以下のブコメをした。

東山紀之新社長、タレント引退へ 「ジャニーズ」屋号変えず再出発、同族経営脱却へ 7日会見 - スポニチ Sponichi Annex 芸能

"焦点のひとつだった「ジャニーズ事務所」の名称変更は行わず改革に取り組む" 正気か?血の気が引いたわ。性加害者の名前を、性加害者の栄誉を温存するという事は実質無傷。日本社会の出直しの好機が潰えた。脱力……

2023/09/07 08:37

b.hatena.ne.jp

 

 

ブランド名を温存する問題点「カリスマの栄誉の温存」

一つには、性加害者の栄誉を温存することになってしまうこと。

 

ジャニー喜多川は、山下達郎が語ったように、「日本の英雄」「カリスマ」としてメディアに扱われてきた。

 

ジャニーが死んだ際は、各メディアが追悼特集を連発し、各局のキャスターが全員喪服を着ていたりした。異様すぎる光景だ。

 

さんざんジャニーズを表紙にしてきたことを誇り、「ジャニーさん、ありがとう!」「YOU、やっちゃいなよ」と表紙に大書した週刊朝日

 

「“子供達”の愛に包まれて」というおぞましいテロップは、局の人間が考えて付けたんですよね?*1

 

dot.asahi.com

 

NHKが紅白でジャニー追悼コーナーをやらなかったのは本当にギリギリの良心だったな。

 

三者委員会が指摘したように、マスメディアと日本社会は完全にジャニー喜多川の性加害の共犯者だった。今回の騒ぎは、日本社会が過ちを認めて、性加害天国である日本のメディア・芸能界と決別する最大の機会だった。

 

ジャニーズという屋号を守るということは、ジャニー喜多川の栄誉を守るということだ。正気か?

 

ジミー・サヴィルはどうなったか?

bunshun.jp

英国では、国民的人気者だったジミー・サヴィルの死後、その罪が暴かれた。

 

サヴィルが存命のうちは英国社会から黙殺されていた児童への大量の性加害が、次々と明るみになり、ロンドン警視庁も動き、その結果何人もの芸能関係者が性加害で逮捕された。MeTooによって、悪しき常識と決別し、英国社会全体が「私たち英国社会は、どんなカリスマだろうと、権力者だろうと、性加害を許さない」というメッセージを発したわけだ。

 

サヴィルを英国社会が断罪し、否定することが、多くの権力者・性加害者への牽制になると共に、性被害者に対しては「相手がどんなカリスマだろうと権力者だろうと泣き寝入りしなくていい。社会があなたを支える」という強いメッセージになった。

 

サヴィルが狙ったのは病院や養護施設、女子のための矯正施設などにいるローティーンの少女たちだった。90年までに50以上の病院や養護施設で慈善活動に関わったが、彼はこれらの施設の中で多くの人々を餌食にしたのだ。病院だけでなく、「番組に出してやるから」と連れていかれたBBCの彼の楽屋で性加害された少女たちもいた。

 

 90年代から散発的に告発は行われたが、いずれも相手にされなかった。ロンドン警視庁スコットランドヤード)にも匿名の告発の手紙が届いたが、証拠不十分として調査も報告もされなかった。サヴィルは警察の上層部にも顔が利いたのだ。

 

 当時、女子のための矯正施設で性加害に遭っていた女性の言葉がサヴィルをとりまく英国の状況をよく表している。

 

「あんな施設にいた娘の話を誰が聞くの? ジミー・サヴィルは教皇から爵位を授与され、皇太子夫妻やサッチャーとも友達なのよ。誰が私たちを信じるの?

 

ともかくサヴィルの栄誉は全て引き剥がされた。それだけでなく、サヴィルの件でロンドン警視庁が本気を出したため、芸能界の性加害者たち(人気ミュージシャンなども含む)が何人も逮捕されたのだ。

 

日本でもそうなるべきではないか?

 

ブランド名を温存する問題点「全ての性被害者の勇気を奪う」

被害者が何百人、何千人いるかわからないが、服部吉次さんらの告発によってジャニー喜多川に性加害された児童は、ジャニーズJr.だけでなく、もっと広範に渡る」ことが示唆された。*2

 

bunshun.jp

 

ジャニーという性加害者の名前が温存されることは、全ての性被害者に無力感を与えることになる。

 

被害者たちは今後の人生のあらゆる場面で、「ジャニーズ」というブランド名を見ることになる。その度にトラウマがフラッシュバックし、敗北感と無力感を抱くだろう。

 

なぜならジャニーズは国民的アイドルであり、道を歩けばジャニーズ、テレビを見ればジャニーズ、電車に乗ればジャニーズ、社会の至る場所がジャニーズに埋め尽くされているからだ。避けて生きることなどできない。本当に普通に暮らしているだけで、嫌でも毎日「ジャニーズ」を目にすることになる。

 

国民はみんな「ジャニーズ」ブランドが大好きで、大事だから、告発者の事を迷惑だとすら感じている。そういうメッセージになってしまうんだよ。

 

MeTooが不発に終わると、告発者本人だけでなく、全ての性被害者の勇気が奪われる。「結局、性被害告発なんかしても無駄なんだ」「社会はカリスマや人気者や権力者の方が大事なんだ」「性被害者なんかの嫌な言葉を聞くより、アイドルで楽しみたいんだ」と学習させてしまうのだ。一方で性加害者たちは「なんだ、やっぱりこれまで通りで大丈夫なんじゃないか」と安堵し、性加害を続けるだろう。

 

これは大げさじゃない。ジャニーズって、「ジャニーのモノ」ってことだぜ。*3事務所名が変更になれば、ジャニーの被害者だけでなく、あらゆる性被害者に勇気をもたらすんだ。日本社会はちゃんと性加害を非難し、告発者の言葉を聞いてくれるんだと。

 

英国は、サヴィルの死後になってようやくとはいえ、少なくともそれをやった。

 

ちなみに今回の外圧の発端となったBBCだが、彼らは当初、サヴィルを擁護していた。BBCの人気番組の司会者だったサヴィルは、BBCにとって「身内」であり、守ろうという意志が強く働いだのだ。サヴィルを告発した他メディアに「それはおかしい、なぜなら~」と反論などしていた始末だ。

 

この大きな過ちを踏まえて、BBCはジャニーズ問題を取り上げるというモチベーションを得たのではなかろうか。

 

松尾潔さんが言っていたとおり、これは性加害者と性被害者に対してだけではなく、全ての日本人、とりわけこれからを生きる子供たちへもメッセージになるんだよ。

 

ジャニーズ事務所がブランド名を変更するというのは、「告発は無駄ではなかった」「日本社会はジャニーの性加害を許さなかった」という永遠の成果になる。歴史に刻まれる成果となるだろう。それを、

 

「たとえ性加害者であっても、ジャニーさんはカリスマだから許される」

「性被害告発するとみんなから迷惑がられ、売名扱いされて叩かれるだけだよ」

 

そんなメッセージを日本社会が発するのか?許してなるものかよ。

 

ブランド名を温存する問題点「グローバルでの恥晒し」

次にビジネス観点の話だが、単純に性加害者の名前をブランド名に残すって正気か?

 

KPOPにファンを奪われて陰りが見え始めたジャニーズは、最近は海外展開も視野に入れているというが、性加害者の名前を誇らしげに掲げて、何も反省もせず、図々しいにも程がある。

 

ファクトフルネスじゃないけど、この世界の人権意識は多少行きつ戻りつしつつも、基本的には人権擁護の方向に進んでいる。ここで抵抗してみせたところで、ジャニーズはジリ貧になっていくはずだ。

 

ついでに俺も日本人として恥ずかしいわ。松野官房長官のアホ発言と同じくらい恥ずかしいよ。

 

そしてその裏にある真の問題点

で、「なぜジャニーズ事務所は屋号を温存したいのか」ということになるが、これはビジネス上の理由だけではない。ビジネス的にジャニーズブランドを温存したいのは、むしろテレビ局と広告主だろう。ジャニーズ事務所側が屋号を守りたい理由は、おそらくもっとしんどいものだ。

 

今でもジャニーズ事務所内では、ジャニー喜多川がカリスマであり、タレントも従業員も団結して大好きなジャニーさんの栄誉を守ろうとしている。

 

これこそが、真の理由だろう。俺は今回の件でタレントに罪はないと思ってきたし、「ジャニーズファン」を一括りに批判する事はよくないと思ってきた。

 

しかし、この数週間いろいろ見てきて、ジャニー喜多川の悪行を正当化するために団結するタレントとファン」が唯一の、そして本質的な問題なんじゃないかと感じるに至った。

 

「ダーク・ヴァネッサ」という小説がテーマにしていることだが、児童を性加害するグルーミングの達人というのがこの世にはいるようだ。ジャニー喜多川はその最大級の教材といえる。

 

グルーミングされた児童たちは、自身の尊厳を踏みにじられ、心を守るために「これは違うんだ」と加害者を擁護し、正当化していく。

 

ジャニーズという組織内にあっては、ジャニー喜多川への信仰心は先輩から後輩に受け継がれている。

 

よく大企業の信じられないような不祥事とかあるけど、たまたま極悪人がその企業に集まってしまったわけではなく、人間は誰でも組織の常識に染まってしまうものだ。よくあるのが、他社から転職してきたばかりの頃は「なんだこの会社、おかしいだろ」と違和感を持ち、周囲に疑問をぶつけたりするが、数ヶ月経って馴染むと、何をおかしいと感じていたのかよくわからなくなってしまうという現象だ。

 

だって、憧れの上司が、大好きな先輩が、戦友とも言える同僚が、全員悪事に手を染めていたら、人間の心理としてはそれは全て正当化したくなってしまうだろう。

 

だから外部から見たら「え!?」と信じられないようなロジックで自社の悪行を正当化し、擁護してしまう。その辺のことを過去に書いた。

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

ましてや、右も左も分からない、アイドルに憧れる児童が、グルーミングの達人であるジャニーに取り込まれない方が不思議なぐらいだ。

 

ジャニーズ事務所においては、ジャニーからの性加害を受けたタレントが、周囲の尊敬する先輩たちの“ジャニーさん”への強い信仰を見て、性加害について「これは普通のことなんだ」「むしろ良いことなんだ」と自己洗脳を繰り返しているのだろう。

 

だからみんなで団結して“ジャニーさん”を守ろうとしている。「世間一般には理解しがたい事なのかもしれないが、俺たちとジャニーさんの関係はそういうものじゃない」*4という気持ちが、さらに団結を強めるだろう。新興宗教と変わらぬ構図だ。

 

「ジャニーさんは地獄行き」「遺骨かっぱらった」長瀬智也、中居正広らに覚えた違和感は“愛か憎か”(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

ダーク・ヴァネッサじゃないが、グルーミングされた性被害者は自分の尊厳を守るべく加害者を強くかばう事がある。彼らの喜多川への信仰は「今」も続いてる。洗脳を解く為にもオウムのように名称変更は必須なのだが。

2023/09/07 09:45

b.hatena.ne.jp

 

こんな状態で、社内に相談窓口を設けるとか、調査するとか、できっこないよ。ビッグモーターじゃないけど、ジュリーや東山の、会見での発言が、社員やタレントへのメッセージになっているんよ。「社としてはこの方針だから」と。それ以前に、東山が次の社長に就任というのがもっとも強いインナー向けメッセージだ。「みんなわかってるな、今までどおりだぞ」と。何も変わるつもりはないぞと。みんなでジャニーさんの名前を守るぞと。

 

ジュリー社長も、東山氏も、櫻井氏も、達郎も、「もし児童への性加害があったとするならば、絶対に許されないこと」というぬるい一般論しか述べてないよね。

「世間が許さないでしょうね」という論法だ。これはただのエクスキューズだ。

 

問題は、「性加害を知った今、あなたが、ジャニー喜多川をどう思っているか」だよ。世間じゃなくて、あなたは、児童への性加害を許すのか?許さないのか?そこに向き合ったコメントは一つも出てこない。(まあ全員知ってたと思うが。そして悪いとも思ってない!)

 

会社がタレントや社員に向けて発しなければならないメッセージは、

 

「現経営陣は、創業者とはいえジャニー喜多川の悪を許しません。創業者のおぞましい犯罪に加担していたことを反省し、二度とタレントへの性加害が起こらないように、社内改革を行います。現在所属する中でも、かつてジャニーや他の社員からの被害を受けた人は、社内に秘密厳守の相談窓口を設けます。タレント活動に悪影響は出ないと約束しますので、安心してご相談ください」

 

とかだろ。最低限そうしろよ。何が「二次加害にならぬよう、社内調査は行いません」だ。大先輩がジャニー擁護してたら萎縮するしかない。まず心理的安全性を作れよ。

 

ちなみに当事者の会のメンバーの中には、かつてはジャニーを絶賛し、弟をジャニーズに入所させたりしていた人物がおり、「あれあれ~?昔はジャニーズとジャニーさんを絶賛してたくせにw」などと心無い誹謗を浴びている。でも、性被害者の心の動きとして、こうした揺らぎや混乱は別に自然なものなんだよね。*5*6

 

同様に、今現在所属しているタレントの中にも、「ジャニーさんを尊敬してきたけど、やっぱりあれは酷い事をされたんじゃないか?」「自分はすごく傷ついたんじゃないか?」と揺らいでいる人もいるだろう。その揺らぎを「以前の態度と逆だ、矛盾だ」と言って叩くのは、あまりにも人間というものへの想像力に欠けている。

 

こうした洗脳を解くためには、ジャニーという単なる性加害者の輝かしい栄誉の象徴を奪う必要がある。英国民がジミー・サヴィルの栄誉を奪うことで、「こいつは偉大なカリスマ、英国の誇りではなく、児童への卑劣な性加害者だ」という現実認識を社会にインストールしたように。

 

その結果、芸能界における他の性加害者も続々逮捕された。英国が、「もう後戻りできないし、しない」と覚悟を決めたから、そうなった。それは被害者たちの心を少しは安らがせただろう。死人の罪を裁くには、その栄誉に傷を付けるしかない。

 

さらに、この数週間、ジャニーズ関係のキーワードがXのトレンドに上がってくる事が増えたのだが、被害者をバッシングし、ジャニーを擁護するファンが少なからず観測された。

 

また、保守系(?)の陰謀論者たちが「松尾や被害者の会は共産党およびナニカグループに入れ知恵されている」「パヨクの陰謀に乗せられるな」といったツイートを行い、それを見たジャニーズファンが「真実はこういうことらしいです」と拡散する悪夢のような光景も見られた。

 

なんだそりゃ。もちろんファン全員がおかしいわけではないのはわかるし、最大多数のファンは「この件に一切触れない」層なのもわかってるが、これはこれであまりにひどい状況だと感じる。

 

もう一個あるのが、「一部ファン」は、タレントの恋愛は許さないが、ジャニーの性加害は容認するという傾向が見られた。例えば、最近続いたなにわ男子のメンバーたちの熱愛報道に対して、ジャニーズファンたちが怒り狂っていた。そこまではアイドルファンとして普通のことだし、別にいいのだが、なんとジャニーの「恋愛するな」という発言を引用して「ジャニさんの言葉を肝に銘じてね」などとタレントに苦言するツイートが1万いいねされて、トレンドワードのトップに来たりしていた。今それ!?

ジャニー喜多川の発言らしい。これを引用してなにわ男子メンバーを咎めるツイートが1万いいねされていた

これこそタレントを人間扱いしてないよね?自由恋愛はアイドル失格だけど、アイドルに性加害するジャニーはOKなんだ?

 

大半のファンは「不快な話題だからスルーしている」とは思うし、そこまでは責められないが、このように積極的にジャニーを擁護し、被害者を憎んで叩くファンたちの洗脳を解くには、まず社内での洗脳が解除される必要があるだろう。*7

 

報道の通りなら、ジュリー社長はジャニーズ事務所の株の100%を保有しており、交際説のあった東山氏を社長にして院政を敷くだけではないか。そしてブランド名も温存。「何も変えたくないなー」という事務所と、「何も変わらないといいなー」という広告主、テレビ局、ファンの利害が一致し、何も変えないことに決めたわけだ。*8

 

最後に松尾潔さんの一文を引用する。

 

私は、今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき、「声を上げても無駄だ」という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。

 

メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。

 

私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか。

 

(2ページ目)「スマイルカンパニー契約解除の全真相」弁護士を通じて山下達郎・竹内まりや夫妻の“賛成事実”を確認|日刊ゲンダイDIGITAL

 

9/8追記 加害者が死んでいても裁く必要性

「もう加害者死んでるのに、これ以上何を求めてるの?」「タレントやジュリー社長は被害者だよ?」みたいなブコメが、この件についてはたくさんあった。

 

だけど、ジュリー氏や東山氏が「ジャニー」の名前を否定できず、切断できないんだったら、つまりあの会社がジャニーズの屋号を未練がましく手放せないんだったら、残念ながら自浄能力のない組織ということ。日本社会の側が「ジャニー」の名前を否定し、切断するしかない。

 

七尾旅人さんのこのツイートがきっかけで、元ロンドン警視庁(通称スコットランドヤード)司令官のピーター・スピンドラー氏へのインタビューを読んだ。

 

上のツイートは要約なので、正確に引用すると以下のようになる。

 

今となっては、被害者にふさわしい刑事司法を提供することはできなかったと認識しています。しかし、過去には不適切な捜査をして失敗したかもしれないが、今は被害者に社会正義の感覚を与えています。それこそが、本当に重要なことなのです。

 

これが死に逃げを許さず、死者を裁く意義だろう。生きている人間のために裁くのだ。そしてより良い社会のために。

 

イギリス芸能界でも「性加害」の過去――ジャニー喜多川前社長同様“加害者の死亡後”明るみに 捜査した元警察官が語る“日本への提言”

 

日本では「そもそも時効だろ」「本人死んでるのに、何の罪で起訴するの?」など冷笑じみた意見が多い。はてブでもそんなブコメを大量に見たよ。

 

サビル氏の死亡後、性加害について告発する声が多数、上がったことから、イギリスの警察当局は児童保護団体らとともに、大規模な捜査を開始しました。

 

約450人の被害者に事情を聞き、サビル氏が「性器や胸を触る」「番組収録の合間にレイプする」などの性犯罪を200件以上にわたって行っていたと認定。その上で、「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と断じました。

 

こうした認定がされた一方、加害者であるサビル氏が死亡しているため、正式な刑事裁判が開かれることはありませんでした。それでも、「イギリスの警察当局が捜査をしたことは、社会正義の観点から意義があった」と語るのは、捜査の陣頭指揮を執った元ロンドン警視庁司令官のピーター・スピンドラー氏。当時の捜査の状況のほか、同じく加害者が死亡後に"性加害"の問題が明らかになった日本への提言を聞きました。

 

以下のようなくだりもあった。幼かった被害者たちがすぐに被害を訴えることができず、「今頃になって」声を挙げることへの理解。性加害の「時効」を失くすことの意義について。

 

児童への性的虐待のうち、その時点で発見されるのはわずか5%程度であることがわかっています。大人になり、「そこで何が起こったのか」「何が間違っていたのか」「それは自分のせいではなかった」といったことを十分に理解してから被害を訴えることの方が多いのです。

また、他の人たちが名乗り出るのを見て声を上げる人が増えるということから、私たちは「数によって被害者に力を与えうる」ということを実感しました。だから私たちは、被害者が今週、今年、10年後と、いつ告白しても大丈夫だということを、加害者たちに改めて示したと思います。(時効をなくすことで、)犯罪による恐怖を被害者が持つのではなく、加害者に押し付けるのです

 

子供だったら、自分も周りも尊敬し、憧れる神様みたいな人から性加害を受けたら、混乱するしかない。「そこで何が起こったのか」「何が間違っていたのか」「それは自分のせいではなかった」これらの事を認められるまで何十年もかかってもおかしくない。そして告発者が他の被害者に勇気を与え、いわば勇気の連鎖が起こる事がMeTooの本質だ。

 

ジャニー喜多川氏に車中や映画館で「されるがまま」 70年前に声を上げられなかった松崎基泰さんの後悔:東京新聞 TOKYO Web

"告白にちゅうちょもあったが、国民栄誉賞を受賞した作曲家服部良一さんの次男で同級生の服部吉次さん(78)が、日刊ゲンダイに告白の記事を載せたのを機に声を挙げようと" 勇気の連鎖がMeTooの鍵。今こそ第三者委員会を

2023/07/18 11:44

b.hatena.ne.jp

 

スピンドラー氏のインタビューでは警察の話だけでなく、当初サヴィルを全面擁護してしまったBBCをはじめ、メディアの罪と役割についても語られている。NHKに期待したい。

 

BBCは疑惑の報道を主導するという選択肢もあったのに、ジレンマの淵に立たされていました。BBCが「サビル」というスターを生み出したにもかかわらず、誤った選択をしました。制作予定だった番組をキャンセルして、サビル氏の人生を称賛するような番組を制作したのです。

今年の秋には、BBCは、サビル氏がどのような振る舞いをし、どのようにして権力を持ち、あのような虐待を行うに至ったかを描いたドラマを放送する予定です。メディアにはジャーナリスティックな役割、ドキュメンタリーの役割、ストーリーを伝え、明るみに出し、何が正しくて何が間違っているのかを人々に理解させる役割など、多くの役割があると思います。

 

そして最後に、元ロンドン警視庁司令官からの、日本の警察への提言も。

 

――日本でも、ジャニーズ事務所ジャニー喜多川前社長をめぐって「性加害」の問題が取り沙汰されています。イギリス警察の元司令官として、日本の警察に何かメッセージはありますか?

この事件を真剣に受け止めてください。彼が死んだから、起訴という刑事司法の結果が得られないということに焦点を当てないでください。社会正義の観点から考えてほしいです。

そして、彼がどのように活動していたかを捜査することによって、日本の被害者への信頼を築き、彼らが名乗り出るようにし、何が起こったのかについて発言し、話す場を与えることができるようにしてほしいと思います。

多くの場合、被害者は警察を信用しない傾向にあります。被害者を安心させる必要があるのなら、支援団体と協力し、他に相談できる人がいることを伝えて、被害者がさまざまな経路で通報できる体制をつくるべきだと思います。

 

こんな警察トップいたらいいね。日本の警察庁長官は酷かったからね。

 

「中村警察庁長官」が国葬後に辞職へ 逮捕状の握り潰しや元首相秘書・子息への忖度捜査で「官邸の番犬」と呼ばれたスーパー官僚の出世すごろく(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

"週刊新潮に喋ってからは、“メディアの幹部を逮捕するというのは大変なことなんだ。たとえ君たちであっても逮捕中止を命じたよ”などと記者たちに話していましたね" 何言ってだこいつ……?

2022/07/27 08:53

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もちろん英国にもクソなところはいっぱいあるので、闇雲に英国SUGEEEしたいわけじゃない。が、少なくともBBCが自社の過ちを認め、償いのために何年も費やし続けている姿勢や、警察が被疑者死亡であっても(警察にできる範囲で)社会正義を実現しようとした姿勢については、つまり間違いを認め、何を間違っていたかを明言し、悪党の栄光を否定し、悪党との決別を宣言した姿勢については、俺たちも学んでもいいんじゃないの。

 

大阪地検検事の見解↓

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グルーミングについて、タレントだけでなく、もはや業界全体がジャニーにグルーミングされていたという話↓

b.hatena.ne.jp

 

続きを書いた

shin-fedor.hatenablog.com

*1:これ、ジャニーが死ぬ際に病室にタレントたちがぎっしり詰めかけ、ジャニーズの曲をかけまくっていたというエピソードを美談化してるんだと思うが。

*2:ちなみに服部さんやその友人の松崎さんがジャニーの性的虐待を受けたのは小2のときだという。8歳児を数十回も性欲の捌け口にしたんだよジャニーは。

*3:ちなみに英語社名は「Johnny & Associates」だが、これは「ジャニーと仲間たち」という意味になる。絶対いかんでしょ……。

*4:これ完全に「ダーク・ヴァネッサ」の心理。ジャニーさんを理解ってあげられるのは自分たちだけという。

*5:この辺りの心理、自分が慰み者にされたという現実を「全然大したことない」または「神聖な儀式だったんだ」「ちょっと変わった愛の表現なんだ」などと考えることで心を守る機構については、何度か書いた。

*6:あとそもそも「被害者なら無謬なはず」「被害者なら品行方正なはず」というのも誤謬だよな。

*7:所属タレントたちが「ジャニーさん」を信仰している限り、タレントの意に従ってジャニーを無条件で全肯定するファンが、被害者を攻撃し続ける構図は終わらないだろう。

*8:メディア露出も減らない、広告案件も減らない、ファンも減らない。今まで通りメディアはジャニーズに忖度し、不都合な報道をしないし、退所者やジャニーズと競合しそうな男性アイドルグループを番組に出さない。本当に何一つ変わらない。これを「無傷」というのだ。社長も加担メディアも、「悲しい事故でしたね」みたいな雰囲気醸すじゃねーか。口だけじゃなく「本気で変わったのだ」と全世界に示せよ。

松野官房長官は8月30日の会見でどういう文脈で発言したのか?

今どきは会見なんてフル動画が上がっているのでいくらでも確認できちまうんだ!

 

www.youtube.com

※7:20秒あたりから

 

以下、書き起こし。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――共同通信のサカグチです。話題変わります。9月1日で100年を迎える関東大震災の記録について伺います。当時、被災地ではデマが広がり、多くの朝鮮人が軍、警察、自警団によって虐殺されたと伝えられています。

 

政府として朝鮮人虐殺をどう受け止め、何を反省点としているのか。合わせて、現代の日本社会における在日コリアンを含むマイノリティに対するヘイトスピーチヘイトクライムをどう捉えているのか、お尋ねします。


松野:お尋ねについては、政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することができる記録が見当たらないところであります。

 

いずれにせよ、災害発生時において、国籍を問わず、全ての被災者の安全安心の確保に務めることは、政府として極めて重要であると認識しております。

 

また、政府においては、特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の、不当な差別的言動、ましてやそのような動機で行われる暴力や犯罪は、いかなる社会においても許されないと考えています。

 

これまで、外国人等の人権に関する動画やポスター、SNSでの発信等を通じて啓発活動を実施するなど、外国人等に対する偏見や差別の解消に向けて取り組んでいるところであります。

 

なお、捜査当局にあっては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき、適切に対処すると承知しています。

 

――(??)です。関連で伺います。朝鮮人虐殺を巡っては、事実そのものを否定する歴史修正主義的な言説が出回っていますけども。政府として今おっしゃった以上に何か事実関係を調査したり、実態を明らかにする考えはあるのでしょうか?


松野:先ほども申し上げました通り、政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります。

 

関東大震災関連の質問はここまで)

(太字強調は俺による)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ご覧の通り、ハフポストや宇多丸さんの批判は間違ってない。誤解も何も一つもない。松野官房長官が間違った発言をしているだけである。「いずれにせよ」以降はひたすら一般論で、「All Lives Matter」とか「児童への性加害が仮に事実なら許されないこと」みたいなもんである。「無差別殺人は、良くないと思います!」みたいな虚無発言に何の意味があるのか。そら良くないよ。進次郎構文かよ。今はそういうレベルの話してないよ。

 

b.hatena.ne.jp

 

b.hatena.ne.jp

 

なんでこんなことをわざわざ書くかというと、以下のようなツイート(post)が出回っている。

 

 

つまり「松野官房長官は虐殺があったことを否定しているのではない。内務省からの電信文の記録がないと言っているのだ。反政府勢力がいつものように松野官房長官の発言を捻じ曲げているのだ」という言説が流れ始めており、カウンターを当てとかないといかんのではないかと思った次第である。*1

 

問題の発言は8月30日である。上記ツイートに出てくるのは、30日の会見内容を踏まえた31日のやりとりなのである。31日のやりとりしか存在しないなら、まだそうした「誤解だ」的な擁護も成立するのかもわからんが。時系列知らない人はこのツイだけ見て「まーたイソコがやらかしたのか」と短絡してしまいかねない。

 

どうにかして擁護しようと考えず、先ほどの答弁を素直な気持ちで読めば、松野官房長官朝鮮人虐殺があったかどうかは、政府として調査したところ事実かどうか分からなかった。いずれにせよ、国籍を問わず、暴力や犯罪は悪いことである(一般論)。そうしたことがあるのなら、法と証拠に基づき、捜査当局が適切に対処するのではないか(一般論)」と述べているのは明らかでしょうよ。ジュリー藤島や櫻井翔が「児童への性加害が仮にあったとしたなら、許されるものではない(一般論)」と述べてるのと同じだ。あった事実を絶対に認めたくないので、ゆるい一般論を言って誤魔化そうとしている。「殺人?あれは良くないですね」というふわっとした話をしてるんじゃねえんだよ。関東大震災における朝鮮人虐殺の話をしてるんだよ。

 

処理水のトリチウム問題にしてもそうだが、こういうのはちゃんと1個1個検討するべき。朝鮮人虐殺はあったのかなかったのか、これはもう「あった」で確定している。その他のなんだかんだの主張は、朝鮮人虐殺はあった」という1個の事実を了解してから展開してほしい。

 

なんでもかんでも一緒くたに扱ったら、そりゃ合ってるところも合ってないところも出てくるんよ。そんで合ってる1個にのみ(あるいは合ってない1個にのみ)フォーカスして、30個ぐらいある自分の主張は全て無謬なのだと強弁するとか、あるいは30個ぐらいある相手の主張は全て無効なのだと強弁するとか、そんなんばっかりやんけ。30個については30回議論しなきゃならんのだよ。

 

朝鮮人虐殺はたしかにあった。しかし待ってほしい、その背景には~」と論じるなら、まだわかるよ。しかし虐殺自体を認めないとはどういうことだ?我々は信頼できる史料が十分に残されていたら、それを歴史として扱ってきたのではないか?

 

松野さんを擁護したがる人は、おそらくロシア政府や中国政府のデタラメな歴史修正や詭弁、人権侵害に批判的な人が多いのではないかと想像するが、だとしたら日本政府がロシアや中国みたいになるのは嫌だろ?なんか捻れちゃってない?大丈夫?マジでしっかりしてくれよ。我が国は絶対正義かつ無謬かつ世界最優秀であるという中露イズムにいつしか憧れちゃってるんじゃねえか?ロシア人たちが「ブチャでの虐殺はNATOの雇った俳優によるでっち上げ」とか言ってるのを見てどう思ったよ。その気持ちを思い出そう。絶対正義で無謬な存在なんてものがあるとしたら、それはプーチン習近平金正恩のような人間だけだ。

 

処理水の話で言うならば。トリチウムで日本の魚介類が危険だと言って騒いでいて、「トリチウムの量を基準にするんだったら、日本はもっとも安全なレベルよね」と指摘されたんなら、「なるほどそうか。トリチウムについては撤回するわ」と一旦受け止めろよという話。事実と、事実でないことを一緒くたにせず、切り分けろよと。

 

BBC特派員「日本の水産物が心配?世界のすべての水産物食べられない」

複数の論点があるが「トリチウムを理由に健康被害を心配するなら、日本の水産物はたいがいどこの国より安全」は韓国メディアもわかってる。他の論点は他の論点で別途議論するにしても、1個ずつすり合わせを。

2023/08/29 07:18

b.hatena.ne.jp

 

なんでもかんでも一緒くたにまとめて「A集団とB集団、100%正しいのはさあドッチ!?」みたいな粗雑な議論こそが、繰り返される悲劇・惨劇を生むのではないでしょうか。

*1:防衛省にあるはずの文書を、政府が本当に「調査した結果見つからなかった」のだとしたら無能の極みでは?何かご飯論法的なロジックがあるんだと思うが……。