※このたび堂本光一氏についてデマを発信してしまったので訂正とお詫びの記事を出しました。
これはあってはならないだろう。以下のブコメをした。
東山紀之新社長、タレント引退へ 「ジャニーズ」屋号変えず再出発、同族経営脱却へ 7日会見 - スポニチ Sponichi Annex 芸能
"焦点のひとつだった「ジャニーズ事務所」の名称変更は行わず改革に取り組む" 正気か?血の気が引いたわ。性加害者の名前を、性加害者の栄誉を温存するという事は実質無傷。日本社会の出直しの好機が潰えた。脱力……
2023/09/07 08:37
- ブランド名を温存する問題点「カリスマの栄誉の温存」
- ジミー・サヴィルはどうなったか?
- ブランド名を温存する問題点「全ての性被害者の勇気を奪う」
- ブランド名を温存する問題点「グローバルでの恥晒し」
- そしてその裏にある真の問題点
- 9/8追記 加害者が死んでいても裁く必要性
ブランド名を温存する問題点「カリスマの栄誉の温存」
一つには、性加害者の栄誉を温存することになってしまうこと。
ジャニー喜多川は、山下達郎が語ったように、「日本の英雄」「カリスマ」としてメディアに扱われてきた。
ジャニーが死んだ際は、各メディアが追悼特集を連発し、各局のキャスターが全員喪服を着ていたりした。異様すぎる光景だ。
NHKが紅白でジャニー追悼コーナーをやらなかったのは本当にギリギリの良心だったな。
第三者委員会が指摘したように、マスメディアと日本社会は完全にジャニー喜多川の性加害の共犯者だった。今回の騒ぎは、日本社会が過ちを認めて、性加害天国である日本のメディア・芸能界と決別する最大の機会だった。
ジャニーズという屋号を守るということは、ジャニー喜多川の栄誉を守るということだ。正気か?
ジミー・サヴィルはどうなったか?
英国では、国民的人気者だったジミー・サヴィルの死後、その罪が暴かれた。
サヴィルが存命のうちは英国社会から黙殺されていた児童への大量の性加害が、次々と明るみになり、ロンドン警視庁も動き、その結果何人もの芸能関係者が性加害で逮捕された。MeTooによって、悪しき常識と決別し、英国社会全体が「私たち英国社会は、どんなカリスマだろうと、権力者だろうと、性加害を許さない」というメッセージを発したわけだ。
サヴィルを英国社会が断罪し、否定することが、多くの権力者・性加害者への牽制になると共に、性被害者に対しては「相手がどんなカリスマだろうと権力者だろうと泣き寝入りしなくていい。社会があなたを支える」という強いメッセージになった。
サヴィルが狙ったのは病院や養護施設、女子のための矯正施設などにいるローティーンの少女たちだった。90年までに50以上の病院や養護施設で慈善活動に関わったが、彼はこれらの施設の中で多くの人々を餌食にしたのだ。病院だけでなく、「番組に出してやるから」と連れていかれたBBCの彼の楽屋で性加害された少女たちもいた。
90年代から散発的に告発は行われたが、いずれも相手にされなかった。ロンドン警視庁(スコットランドヤード)にも匿名の告発の手紙が届いたが、証拠不十分として調査も報告もされなかった。サヴィルは警察の上層部にも顔が利いたのだ。
当時、女子のための矯正施設で性加害に遭っていた女性の言葉がサヴィルをとりまく英国の状況をよく表している。
「あんな施設にいた娘の話を誰が聞くの? ジミー・サヴィルは教皇から爵位を授与され、皇太子夫妻やサッチャーとも友達なのよ。誰が私たちを信じるの?」
ともかくサヴィルの栄誉は全て引き剥がされた。それだけでなく、サヴィルの件でロンドン警視庁が本気を出したため、芸能界の性加害者たち(人気ミュージシャンなども含む)が何人も逮捕されたのだ。
日本でもそうなるべきではないか?
ブランド名を温存する問題点「全ての性被害者の勇気を奪う」
被害者が何百人、何千人いるかわからないが、服部吉次さんらの告発によって「ジャニー喜多川に性加害された児童は、ジャニーズJr.だけでなく、もっと広範に渡る」ことが示唆された。*2
ジャニーという性加害者の名前が温存されることは、全ての性被害者に無力感を与えることになる。
被害者たちは今後の人生のあらゆる場面で、「ジャニーズ」というブランド名を見ることになる。その度にトラウマがフラッシュバックし、敗北感と無力感を抱くだろう。
なぜならジャニーズは国民的アイドルであり、道を歩けばジャニーズ、テレビを見ればジャニーズ、電車に乗ればジャニーズ、社会の至る場所がジャニーズに埋め尽くされているからだ。避けて生きることなどできない。本当に普通に暮らしているだけで、嫌でも毎日「ジャニーズ」を目にすることになる。
国民はみんな「ジャニーズ」ブランドが大好きで、大事だから、告発者の事を迷惑だとすら感じている。そういうメッセージになってしまうんだよ。
MeTooが不発に終わると、告発者本人だけでなく、全ての性被害者の勇気が奪われる。「結局、性被害告発なんかしても無駄なんだ」「社会はカリスマや人気者や権力者の方が大事なんだ」「性被害者なんかの嫌な言葉を聞くより、アイドルで楽しみたいんだ」と学習させてしまうのだ。一方で性加害者たちは「なんだ、やっぱりこれまで通りで大丈夫なんじゃないか」と安堵し、性加害を続けるだろう。
これは大げさじゃない。ジャニーズって、「ジャニーのモノ」ってことだぜ。*3事務所名が変更になれば、ジャニーの被害者だけでなく、あらゆる性被害者に勇気をもたらすんだ。日本社会はちゃんと性加害を非難し、告発者の言葉を聞いてくれるんだと。
英国は、サヴィルの死後になってようやくとはいえ、少なくともそれをやった。
ちなみに今回の外圧の発端となったBBCだが、彼らは当初、サヴィルを擁護していた。BBCの人気番組の司会者だったサヴィルは、BBCにとって「身内」であり、守ろうという意志が強く働いだのだ。サヴィルを告発した他メディアに「それはおかしい、なぜなら~」と反論などしていた始末だ。
この大きな過ちを踏まえて、BBCはジャニーズ問題を取り上げるというモチベーションを得たのではなかろうか。
松尾潔さんが言っていたとおり、これは性加害者と性被害者に対してだけではなく、全ての日本人、とりわけこれからを生きる子供たちへもメッセージになるんだよ。
ジャニーズ事務所がブランド名を変更するというのは、「告発は無駄ではなかった」「日本社会はジャニーの性加害を許さなかった」という永遠の成果になる。歴史に刻まれる成果となるだろう。それを、
「たとえ性加害者であっても、ジャニーさんはカリスマだから許される」
「性被害告発するとみんなから迷惑がられ、売名扱いされて叩かれるだけだよ」
そんなメッセージを日本社会が発するのか?許してなるものかよ。
ブランド名を温存する問題点「グローバルでの恥晒し」
次にビジネス観点の話だが、単純に性加害者の名前をブランド名に残すって正気か?
KPOPにファンを奪われて陰りが見え始めたジャニーズは、最近は海外展開も視野に入れているというが、性加害者の名前を誇らしげに掲げて、何も反省もせず、図々しいにも程がある。
ファクトフルネスじゃないけど、この世界の人権意識は多少行きつ戻りつしつつも、基本的には人権擁護の方向に進んでいる。ここで抵抗してみせたところで、ジャニーズはジリ貧になっていくはずだ。
ついでに俺も日本人として恥ずかしいわ。松野官房長官のアホ発言と同じくらい恥ずかしいよ。
そしてその裏にある真の問題点
で、「なぜジャニーズ事務所は屋号を温存したいのか」ということになるが、これはビジネス上の理由だけではない。ビジネス的にジャニーズブランドを温存したいのは、むしろテレビ局と広告主だろう。ジャニーズ事務所側が屋号を守りたい理由は、おそらくもっとしんどいものだ。
今でもジャニーズ事務所内では、ジャニー喜多川がカリスマであり、タレントも従業員も団結して大好きなジャニーさんの栄誉を守ろうとしている。
これこそが、真の理由だろう。俺は今回の件でタレントに罪はないと思ってきたし、「ジャニーズファン」を一括りに批判する事はよくないと思ってきた。
しかし、この数週間いろいろ見てきて、「ジャニー喜多川の悪行を正当化するために団結するタレントとファン」が唯一の、そして本質的な問題なんじゃないかと感じるに至った。
「ダーク・ヴァネッサ」という小説がテーマにしていることだが、児童を性加害するグルーミングの達人というのがこの世にはいるようだ。ジャニー喜多川はその最大級の教材といえる。
グルーミングされた児童たちは、自身の尊厳を踏みにじられ、心を守るために「これは違うんだ」と加害者を擁護し、正当化していく。
ジャニーズという組織内にあっては、ジャニー喜多川への信仰心は先輩から後輩に受け継がれている。
よく大企業の信じられないような不祥事とかあるけど、たまたま極悪人がその企業に集まってしまったわけではなく、人間は誰でも組織の常識に染まってしまうものだ。よくあるのが、他社から転職してきたばかりの頃は「なんだこの会社、おかしいだろ」と違和感を持ち、周囲に疑問をぶつけたりするが、数ヶ月経って馴染むと、何をおかしいと感じていたのかよくわからなくなってしまうという現象だ。
だって、憧れの上司が、大好きな先輩が、戦友とも言える同僚が、全員悪事に手を染めていたら、人間の心理としてはそれは全て正当化したくなってしまうだろう。
だから外部から見たら「え!?」と信じられないようなロジックで自社の悪行を正当化し、擁護してしまう。その辺のことを過去に書いた。
ましてや、右も左も分からない、アイドルに憧れる児童が、グルーミングの達人であるジャニーに取り込まれない方が不思議なぐらいだ。
ジャニーズ事務所においては、ジャニーからの性加害を受けたタレントが、周囲の尊敬する先輩たちの“ジャニーさん”への強い信仰を見て、性加害について「これは普通のことなんだ」「むしろ良いことなんだ」と自己洗脳を繰り返しているのだろう。
だからみんなで団結して“ジャニーさん”を守ろうとしている。「世間一般には理解しがたい事なのかもしれないが、俺たちとジャニーさんの関係はそういうものじゃない」*4という気持ちが、さらに団結を強めるだろう。新興宗教と変わらぬ構図だ。
「ジャニーさんは地獄行き」「遺骨かっぱらった」長瀬智也、中居正広らに覚えた違和感は“愛か憎か”(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース
ダーク・ヴァネッサじゃないが、グルーミングされた性被害者は自分の尊厳を守るべく加害者を強くかばう事がある。彼らの喜多川への信仰は「今」も続いてる。洗脳を解く為にもオウムのように名称変更は必須なのだが。
2023/09/07 09:45
こんな状態で、社内に相談窓口を設けるとか、調査するとか、できっこないよ。ビッグモーターじゃないけど、ジュリーや東山の、会見での発言が、社員やタレントへのメッセージになっているんよ。「社としてはこの方針だから」と。それ以前に、東山が次の社長に就任というのがもっとも強いインナー向けメッセージだ。「みんなわかってるな、今までどおりだぞ」と。何も変わるつもりはないぞと。みんなでジャニーさんの名前を守るぞと。
ジュリー社長も、東山氏も、櫻井氏も、達郎も、「もし児童への性加害があったとするならば、絶対に許されないこと」というぬるい一般論しか述べてないよね。
「世間が許さないでしょうね」という論法だ。これはただのエクスキューズだ。
問題は、「性加害を知った今、あなたが、ジャニー喜多川をどう思っているか」だよ。世間じゃなくて、あなたは、児童への性加害を許すのか?許さないのか?そこに向き合ったコメントは一つも出てこない。(まあ全員知ってたと思うが。そして悪いとも思ってない!)
会社がタレントや社員に向けて発しなければならないメッセージは、
「現経営陣は、創業者とはいえジャニー喜多川の悪を許しません。創業者のおぞましい犯罪に加担していたことを反省し、二度とタレントへの性加害が起こらないように、社内改革を行います。現在所属する中でも、かつてジャニーや他の社員からの被害を受けた人は、社内に秘密厳守の相談窓口を設けます。タレント活動に悪影響は出ないと約束しますので、安心してご相談ください」
とかだろ。最低限そうしろよ。何が「二次加害にならぬよう、社内調査は行いません」だ。大先輩がジャニー擁護してたら萎縮するしかない。まず心理的安全性を作れよ。
ちなみに当事者の会のメンバーの中には、かつてはジャニーを絶賛し、弟をジャニーズに入所させたりしていた人物がおり、「あれあれ~?昔はジャニーズとジャニーさんを絶賛してたくせにw」などと心無い誹謗を浴びている。でも、性被害者の心の動きとして、こうした揺らぎや混乱は別に自然なものなんだよね。*5*6
同様に、今現在所属しているタレントの中にも、「ジャニーさんを尊敬してきたけど、やっぱりあれは酷い事をされたんじゃないか?」「自分はすごく傷ついたんじゃないか?」と揺らいでいる人もいるだろう。その揺らぎを「以前の態度と逆だ、矛盾だ」と言って叩くのは、あまりにも人間というものへの想像力に欠けている。
こうした洗脳を解くためには、ジャニーという単なる性加害者の輝かしい栄誉の象徴を奪う必要がある。英国民がジミー・サヴィルの栄誉を奪うことで、「こいつは偉大なカリスマ、英国の誇りではなく、児童への卑劣な性加害者だ」という現実認識を社会にインストールしたように。
その結果、芸能界における他の性加害者も続々逮捕された。英国が、「もう後戻りできないし、しない」と覚悟を決めたから、そうなった。それは被害者たちの心を少しは安らがせただろう。死人の罪を裁くには、その栄誉に傷を付けるしかない。
さらに、この数週間、ジャニーズ関係のキーワードがXのトレンドに上がってくる事が増えたのだが、被害者をバッシングし、ジャニーを擁護するファンが少なからず観測された。
また、保守系(?)の陰謀論者たちが「松尾や被害者の会は共産党およびナニカグループに入れ知恵されている」「パヨクの陰謀に乗せられるな」といったツイートを行い、それを見たジャニーズファンが「真実はこういうことらしいです」と拡散する悪夢のような光景も見られた。
なんだそりゃ。もちろんファン全員がおかしいわけではないのはわかるし、最大多数のファンは「この件に一切触れない」層なのもわかってるが、これはこれであまりにひどい状況だと感じる。
もう一個あるのが、「一部ファン」は、タレントの恋愛は許さないが、ジャニーの性加害は容認するという傾向が見られた。例えば、最近続いたなにわ男子のメンバーたちの熱愛報道に対して、ジャニーズファンたちが怒り狂っていた。そこまではアイドルファンとして普通のことだし、別にいいのだが、なんとジャニーの「恋愛するな」という発言を引用して「ジャニさんの言葉を肝に銘じてね」などとタレントに苦言するツイートが1万いいねされて、トレンドワードのトップに来たりしていた。今それ!?
これこそタレントを人間扱いしてないよね?自由恋愛はアイドル失格だけど、アイドルに性加害するジャニーはOKなんだ?
大半のファンは「不快な話題だからスルーしている」とは思うし、そこまでは責められないが、このように積極的にジャニーを擁護し、被害者を憎んで叩くファンたちの洗脳を解くには、まず社内での洗脳が解除される必要があるだろう。*7
報道の通りなら、ジュリー社長はジャニーズ事務所の株の100%を保有しており、交際説のあった東山氏を社長にして院政を敷くだけではないか。そしてブランド名も温存。「何も変えたくないなー」という事務所と、「何も変わらないといいなー」という広告主、テレビ局、ファンの利害が一致し、何も変えないことに決めたわけだ。*8
最後に松尾潔さんの一文を引用する。
私は、今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき、「声を上げても無駄だ」という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。
メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。
私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか。
(2ページ目)「スマイルカンパニー契約解除の全真相」弁護士を通じて山下達郎・竹内まりや夫妻の“賛成事実”を確認|日刊ゲンダイDIGITAL
9/8追記 加害者が死んでいても裁く必要性
「もう加害者死んでるのに、これ以上何を求めてるの?」「タレントやジュリー社長は被害者だよ?」みたいなブコメが、この件についてはたくさんあった。
だけど、ジュリー氏や東山氏が「ジャニー」の名前を否定できず、切断できないんだったら、つまりあの会社がジャニーズの屋号を未練がましく手放せないんだったら、残念ながら自浄能力のない組織ということ。日本社会の側が「ジャニー」の名前を否定し、切断するしかない。
ジャニー喜多川事件について、ジミー・サビルの死後捜査に携わった英国の警察官の言葉。
— 七尾旅人 (@tavito_net) 2023年9月7日
「過去には失敗したが、今は被害者に社会正義の感覚を与えている。それこそが本当に重要なことなのです。このような捜査を行うことは、加害者が死んでいても多くのメリットがある」 https://t.co/OT5pQO0rAq
七尾旅人さんのこのツイートがきっかけで、元ロンドン警視庁(通称スコットランドヤード)司令官のピーター・スピンドラー氏へのインタビューを読んだ。
上のツイートは要約なので、正確に引用すると以下のようになる。
今となっては、被害者にふさわしい刑事司法を提供することはできなかったと認識しています。しかし、過去には不適切な捜査をして失敗したかもしれないが、今は被害者に社会正義の感覚を与えています。それこそが、本当に重要なことなのです。
これが死に逃げを許さず、死者を裁く意義だろう。生きている人間のために裁くのだ。そしてより良い社会のために。
イギリス芸能界でも「性加害」の過去――ジャニー喜多川前社長同様“加害者の死亡後”明るみに 捜査した元警察官が語る“日本への提言”
日本では「そもそも時効だろ」「本人死んでるのに、何の罪で起訴するの?」など冷笑じみた意見が多い。はてブでもそんなブコメを大量に見たよ。
サビル氏の死亡後、性加害について告発する声が多数、上がったことから、イギリスの警察当局は児童保護団体らとともに、大規模な捜査を開始しました。
約450人の被害者に事情を聞き、サビル氏が「性器や胸を触る」「番組収録の合間にレイプする」などの性犯罪を200件以上にわたって行っていたと認定。その上で、「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と断じました。
こうした認定がされた一方、加害者であるサビル氏が死亡しているため、正式な刑事裁判が開かれることはありませんでした。それでも、「イギリスの警察当局が捜査をしたことは、社会正義の観点から意義があった」と語るのは、捜査の陣頭指揮を執った元ロンドン警視庁司令官のピーター・スピンドラー氏。当時の捜査の状況のほか、同じく加害者が死亡後に"性加害"の問題が明らかになった日本への提言を聞きました。
以下のようなくだりもあった。幼かった被害者たちがすぐに被害を訴えることができず、「今頃になって」声を挙げることへの理解。性加害の「時効」を失くすことの意義について。
児童への性的虐待のうち、その時点で発見されるのはわずか5%程度であることがわかっています。大人になり、「そこで何が起こったのか」「何が間違っていたのか」「それは自分のせいではなかった」といったことを十分に理解してから被害を訴えることの方が多いのです。
また、他の人たちが名乗り出るのを見て声を上げる人が増えるということから、私たちは「数によって被害者に力を与えうる」ということを実感しました。だから私たちは、被害者が今週、今年、10年後と、いつ告白しても大丈夫だということを、加害者たちに改めて示したと思います。(時効をなくすことで、)犯罪による恐怖を被害者が持つのではなく、加害者に押し付けるのです。
子供だったら、自分も周りも尊敬し、憧れる神様みたいな人から性加害を受けたら、混乱するしかない。「そこで何が起こったのか」「何が間違っていたのか」「それは自分のせいではなかった」これらの事を認められるまで何十年もかかってもおかしくない。そして告発者が他の被害者に勇気を与え、いわば勇気の連鎖が起こる事がMeTooの本質だ。
ジャニー喜多川氏に車中や映画館で「されるがまま」 70年前に声を上げられなかった松崎基泰さんの後悔:東京新聞 TOKYO Web
"告白にちゅうちょもあったが、国民栄誉賞を受賞した作曲家服部良一さんの次男で同級生の服部吉次さん(78)が、日刊ゲンダイに告白の記事を載せたのを機に声を挙げようと" 勇気の連鎖がMeTooの鍵。今こそ第三者委員会を
2023/07/18 11:44
スピンドラー氏のインタビューでは警察の話だけでなく、当初サヴィルを全面擁護してしまったBBCをはじめ、メディアの罪と役割についても語られている。NHKに期待したい。
BBCは疑惑の報道を主導するという選択肢もあったのに、ジレンマの淵に立たされていました。BBCが「サビル」というスターを生み出したにもかかわらず、誤った選択をしました。制作予定だった番組をキャンセルして、サビル氏の人生を称賛するような番組を制作したのです。
今年の秋には、BBCは、サビル氏がどのような振る舞いをし、どのようにして権力を持ち、あのような虐待を行うに至ったかを描いたドラマを放送する予定です。メディアにはジャーナリスティックな役割、ドキュメンタリーの役割、ストーリーを伝え、明るみに出し、何が正しくて何が間違っているのかを人々に理解させる役割など、多くの役割があると思います。
そして最後に、元ロンドン警視庁司令官からの、日本の警察への提言も。
――日本でも、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長をめぐって「性加害」の問題が取り沙汰されています。イギリス警察の元司令官として、日本の警察に何かメッセージはありますか?
この事件を真剣に受け止めてください。彼が死んだから、起訴という刑事司法の結果が得られないということに焦点を当てないでください。社会正義の観点から考えてほしいです。
そして、彼がどのように活動していたかを捜査することによって、日本の被害者への信頼を築き、彼らが名乗り出るようにし、何が起こったのかについて発言し、話す場を与えることができるようにしてほしいと思います。
多くの場合、被害者は警察を信用しない傾向にあります。被害者を安心させる必要があるのなら、支援団体と協力し、他に相談できる人がいることを伝えて、被害者がさまざまな経路で通報できる体制をつくるべきだと思います。
こんな警察トップいたらいいね。日本の警察庁長官は酷かったからね。
「中村警察庁長官」が国葬後に辞職へ 逮捕状の握り潰しや元首相秘書・子息への忖度捜査で「官邸の番犬」と呼ばれたスーパー官僚の出世すごろく(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
"週刊新潮に喋ってからは、“メディアの幹部を逮捕するというのは大変なことなんだ。たとえ君たちであっても逮捕中止を命じたよ”などと記者たちに話していましたね" 何言ってだこいつ……?
2022/07/27 08:53
もちろん英国にもクソなところはいっぱいあるので、闇雲に英国SUGEEEしたいわけじゃない。が、少なくともBBCが自社の過ちを認め、償いのために何年も費やし続けている姿勢や、警察が被疑者死亡であっても(警察にできる範囲で)社会正義を実現しようとした姿勢については、つまり間違いを認め、何を間違っていたかを明言し、悪党の栄光を否定し、悪党との決別を宣言した姿勢については、俺たちも学んでもいいんじゃないの。
元大阪地検検事の見解↓
グルーミングについて、タレントだけでなく、もはや業界全体がジャニーにグルーミングされていたという話↓
続きを書いた
*1:これ、ジャニーが死ぬ際に病室にタレントたちがぎっしり詰めかけ、ジャニーズの曲をかけまくっていたというエピソードを美談化してるんだと思うが。
*2:ちなみに服部さんやその友人の松崎さんがジャニーの性的虐待を受けたのは小2のときだという。8歳児を数十回も性欲の捌け口にしたんだよジャニーは。
*3:ちなみに英語社名は「Johnny & Associates」だが、これは「ジャニーと仲間たち」という意味になる。絶対いかんでしょ……。
*4:これ完全に「ダーク・ヴァネッサ」の心理。ジャニーさんを理解ってあげられるのは自分たちだけという。
*5:この辺りの心理、自分が慰み者にされたという現実を「全然大したことない」または「神聖な儀式だったんだ」「ちょっと変わった愛の表現なんだ」などと考えることで心を守る機構については、何度か書いた。
*6:あとそもそも「被害者なら無謬なはず」「被害者なら品行方正なはず」というのも誤謬だよな。
*7:所属タレントたちが「ジャニーさん」を信仰している限り、タレントの意に従ってジャニーを無条件で全肯定するファンが、被害者を攻撃し続ける構図は終わらないだろう。
*8:メディア露出も減らない、広告案件も減らない、ファンも減らない。今まで通りメディアはジャニーズに忖度し、不都合な報道をしないし、退所者やジャニーズと競合しそうな男性アイドルグループを番組に出さない。本当に何一つ変わらない。これを「無傷」というのだ。社長も加担メディアも、「悲しい事故でしたね」みたいな雰囲気醸すじゃねーか。口だけじゃなく「本気で変わったのだ」と全世界に示せよ。