はてブの出来事

備忘録です。

「被害者なら警察に行くのが普通」は本当か?(改題)

このあたりの話については過去にもたびたび記事にしているのだが

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

shin-fedor.hatenablog.com

 

わりと繰り返しになるけど、最近またそういう話が出ているので。

 

過去ブクマ

 

俺は本当にこのテーマについては何度も何度も書いている。はてブを始めた2018年から定期的に書いている。

 

昔援助交際してた(追記しました)

いじめられっ子が「これはイジメではない、友達間のおふざけだ」と自己洗脳するのと似た心理変遷に思える。性被害だと認めてしまうと尊厳が壊れてしまうから、主体的な行動なんだと塗り替え心を守ろうとするバイアス

2018/09/01 10:04

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拝啓 伊藤詩織様 | 差出人は25年前の最も有名なレイプ事件の被害者 | クーリエ・ジャポン

レイプだけでなくイジメでもパワハラでも人間の尊厳を踏みにじられたとき被害者は混乱し説明しづらい行動を取ることがある。俺は男だが同じような経験があるから伊藤氏の気持ちはわかる。風化も歴史改竄もさせまい。

2018/12/07 08:26

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伊藤詩織さんに山口さん代理人「被害後に加害者を気遣う言葉、社会常識ではありえない」 - 弁護士ドットコムニュース

胸糞。イジメ被害者が加害者を遊びに誘う、DV被害者が加害者に軽口を叩いてみせる、誘拐被害者が誘拐犯をからかう、全て自分の心を守るための反応だ。人間は尊厳を踏みにじられると混乱するし正常性バイアスが働く。

2019/07/11 08:23

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無力感を覚えて抵抗しないのは「普通」のこと 名古屋・性犯罪無罪判決、控訴審で精神科医が証言(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

苛烈なイジメ被害者もパワハラ被害者も、普通は抵抗しないし、なんなら表向きは笑って受け入れたり軽口叩いたりすることも多いからね。安全確保のため、パニックのため、心を守るため、そうした反応は起こる。

2019/12/14 06:50

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(社説)伊藤氏の勝訴 社会の病理も問われた:朝日新聞デジタル

ネットの反応見ると、今まで本事件を「よくわからん、どっちもどっち」みたいに扱ってた人の多くもツッコミに回っている。それほどまでに「性暴力被害者は笑ったりしない」という主張は時代の感覚と乖離しすぎてる。

2019/12/20 13:12

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下請けに性的関係を迫らないでほしいという簡単なお話(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

屈辱感は重要キーワード。童貞をプロデュース。でもあったけど、パワハラやセクハラで他人に屈服させられるのは人間の尊厳を大いに損なう。被害者は心を守るために「しょうがねえなーw」などとおどけたフリをする。

2020/05/18 19:47

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いじめ紀行を再読して考えたこと 02-90年代には許されていた?

被害者と加害者が友人って超よくある事だよ。俺も加害者たちと家を行き来して遊んでた。連日教室で全裸にされ脱がされた下着を女子に投げつけられたりしてたが、心の尊厳を守るため「やめろやw」等と言っていた。

2021/07/23 22:29

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ウィル・スミス氏が米アカデミー退会を表明 授賞式での平手打ちは「言い訳のしようもない」と - BBCニュース

スミス含め皆笑ってたというが、芸人が面白顔で何かを叫んで壇上から客席を煽ったら、とりあえず反射的に笑う事は不自然じゃない。尊厳を蹂躙されて混乱した人が、自己防衛で無意識に表情を笑顔で固定する事もある。

2022/04/05 11:10

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被害者は意外と加害者を憎まない

良記事。被害者が「自分が被害を受けた」事実を受け入れがたく、自分と向き合えずに「被害など受けていない」と考えてしまう。俺もいじめについての記事でその辺を書いたよ https://shin-fedor.hatenablog.com/entry/2022/11/25/123310

2023/01/04 09:07

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権力勾配理論の弊害と欺瞞|山口貴士 aka 無駄に感じが悪いヤマベン|note

権力的に弱い人間(例えば被保護者)は強い人間(例えば保護者)に忖度する思考が働くため、「彼女は自由意志で養父とセックスしたのだ」といった構図には疑う余地があり、全否定できない。/人名直ってたのでコメ消

2023/02/05 09:27

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(追記)元AV女優がジャニーさんの件について思ったこと

おそらく普遍的な人間心理かと。いじめや差別に対しても、「自分を被害者だと認めたくない」「なので被害を矮小化し、他の被害者を叩いたり、加害者をかばったりする」というのは、何度も体験も観測もしてきたよ。

2023/04/13 09:34

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これは同じ状況になったことがない人には想像が及びにくいことなのだろうか?

 

「正しい被害者」の振る舞いはなかなかできない

 

俺自身は小中の頃ハードなイジメ(教室で全裸にされて服を窓から投げ捨てられたり、かばんなどの私物にみんなから爆笑しながらつばをかけられたり)に遭ったが、それまで家族や友人と幸せで楽しい人生を送ってきたのに、安全なはずの学校で、自分が玩具のように扱われ、尊厳を踏みにじられることを受け入れがたく、どうしたかというと「自分はイジメに遭っているのではない」という自己暗示を行い、「ちょwふざけんなよ」などとイジメではないかのように振る舞ったのだ。あのとき俺が自殺でもしていたら、教師や級友たちは

 

「イジメとかじゃないですよ、笑い合ってじゃれていたし、時には叩き返したり、要求を拒絶したりしていました。楽しく雑談したり、サッカーをしていた。本当にイジメなら、そんなことできないでしょう?」

 

と証言したことだろう。

 

あるいは、昔一瞬だけいたある職場で、先輩からのハードなパワハラを受けていた同僚は、退職することになったあと、最後に一度出社し、お芝居のようにパワハラ先輩の両手を握って泣きながら感謝を表明していた。そのぐらい先輩が恐ろしく、恨みを買わないように全力で媚びて辞めなければ、安心して次の人生に進めなかったのだろうと思う。

 

ジャニーズの件で大変多く目にしたのが、「当事者の会のAは、弟をジャニーズに入れさせたり、ジャニーズがいかに楽しいかを本にして、子どもたちに入所を推奨していた」「ジャニーさんの葬儀に出て泣いたりしていた」「本当の被害者ならそんなことをするはずがない」といった言説だ。

 

書籍「男性の性被害」についての吉田豪の書評では、豪さんがジャニーズ性加害問題についてこんなふうに書いている。

 

shinsho-plus.shueisha.co.jp

 

 なお、ボクはジャニーズ性加害問題当事者の会のメンバー複数名とイベントで一緒になったこともあるんだが、性被害について、特にバックステージではお互い笑い話みたいにツッコミ合ってたりするのが印象的だった。

 

 本人たちも言っていたのは、少年期に性被害を受けて、学校ではそんなことバレたらナメられるから誰にも言えなかったし、だからこそ同じジャニーズ事務所の仲間では同志みたいな意識も芽生えたし、お互い笑い話にでもしなければやっていけない感情もあったらしい。“あいつら、笑ってるから全然トラウマになんかなってない”的に思う人もいるだろうけど、そんなのは大間違いってことだ。

 

太字強調は俺による。豪さんはこういう機微がわかる人なんだよなあ。

 

ともかくイジメの、パワハラの、セクハラの、モラハラの、全ての被害者には

 

「尊厳を踏みにじられて玩具みたいに扱われたなんて恥ずかしい」

「自分を性被害者だなんて認めたくない」

「加害者を怒らせるのは怖い」

「できれば全部なかったことにして今までの生活や人間関係を続けたい」

 

といった複雑な感情があるんですよ。だから加害者に阿るような態度を取ったり、対等であるかのように振る舞ったりしてしまう。加害者の思うつぼなんだけど、心を守るためにそういう反応をし、そんな自分自身を責め続け、病んでしまったりする。

 

ジャニーズの件はその上に「尊敬する大カリスマ」「頼れる先輩も心許す同僚も可愛い後輩もみんなそのカリスマを神の如く崇めている」という状況でさらに感情が複雑骨折している。

 

弟を入所させたり若い子を勧誘したりしたのは、自分が憧れのジャニーさんに尊厳を蹂躙され、傷つけられ、被害に遭ったということを受け入れられず、「自分はひどいことをされていない」「あんなのは大したことじゃない」「なぜならジャニーさんは素晴らしい人だから」「あれが本当にひどい被害なら、同じ事をされた先輩たちがそう言うはず」「変に騒いで大好きなジャニーズを壊したくない」といった正常性バイアスがかかり、それを自分に証明するための、暗示をかけるための行為だったんじゃないか。

 

時間が経って、自分の性被害を認められるようになったのが「今」なのだとしても何もおかしなことはないと思うよ。というか当事者の会のメンバーでも「今でもジャニーさんのことは尊敬しています」と言ってる人何人かおるよね。「性加害されたのなら尊敬しているはずがない」とでも言いますか?って話よ。人間理解が単純すぎないか?

私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。

自分の尊敬する人がクソ野郎であることを認めるのって実はかなり難しく、「あれは愛のムチだった、今は感謝している」などと美化したり、尊敬する人を正当化するために自分もハラスメントを始めたりするのよな。

2022/03/21 20:02

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「ジャニーさんは地獄行き」「遺骨かっぱらった」長瀬智也、中居正広らに覚えた違和感は“愛か憎か”(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

ダーク・ヴァネッサじゃないが、グルーミングされた性被害者は自分の尊厳を守るべく加害者を強くかばう事がある。彼らの喜多川への信仰は「今」も続いてる。洗脳を解く為にもオウムのように名称変更は必須なのでは。

2023/09/07 09:45

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そこまでハードなイジメやハラスメントを受けたことがない人であっても、「なんであんなことされたのにあんな態度取っちゃったんだろう」「なんであのときああできなかったんだろう」「なんで抵抗しなかったんだろう」「叫べばよかった」「逃げればよかった」と後悔したり自分を責めたり、取り返しがつかないぐらい時間が経ってから脳内でやり返したり言い返したりしたことくらい、ないのかね?あのとき自分がされたことは本当にひどいことなんだ、自分は深く傷つけられたんだということを受け容れるのは簡単じゃない。

 

身の危険を感じてフレンドリーに振る舞うことない?

 

または身の危険を感じて加害者にフレンドリーに振る舞うケースもある。以前、女性キャンパーがおっさんのナンパをあしらい続け、最後にブチ切れる動画がはてブでも話題になったよな。

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あの動画、前半は女性キャンパーも笑顔で冗談っぽく男に対応してるんだけど、それって要はおっさんを逆撫でしないように必死であしらってるんだよ。でも笑顔で冗談っぽく対応しているところだけを取り上げて「女の方も好意的だっただろ」「てか本当に嫌なら最初から逃げるか大声出せよ。ニコニコしてるから男も良いのかなって思うんだよ」みたいな反応もあるよな。

 

あるいは幻冬舎の天才編集者箕輪厚介氏が下請けのライター女性にセクハラで告発された件。

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joshi-spa.jp

これも女性ライター氏は、LINEでの対応だけ見ると箕輪氏のアプローチに対して一見フレンドリーで、楽しそうに応対しているわけ(読めばわかるが箕輪氏の誘いを全てはっきり断っている。ただしフレンドリーに)。ライター氏からしてみたら大きい仕事をするチャンスだし、なんとかして担当編集者の機嫌を損ねないようにかわしているんや。が、これもわからん人には「女性ライターも箕輪といっしょにノッてて仲良いじゃん」「この態度は男側が勘違いしてもしょうがないでしょ」とか言われてしまうやつなんだよな。

 

まーとにかく「一見フレンドリー」「一緒に楽しくノッているように見える」のは、権力勾配やら、恐怖心からの自衛のためにやってるってことが普通にあるんだよ。

 

「本当の被害者」はみんな警察に行っているのか?内閣府調査より

 

特に「まさかこの人が自分にそんなことをするとは」「まさか自分がこの人にそんなことをされるとは」という相手から不意に尊厳を踏みにじられてパニックになるなんて心理の機序は普遍的なものかと思うが、わからんもんかな。わかりやすいキモオジのような人物の事は警戒しても、尊敬する恩師や先輩の事は警戒できなかったりする。

 

「本当の被害者なら即警察に行くはず~」とか言っちゃう人らは想像力がゼロかよ。それが自分じゃなくても、例えばあなたの大事な家族が性被害に遭い、ショックや混乱で「正しい被害者像」を演じられなかった場合を考えてみてくれよ。それを他人が「なんで警察行かないのか意味不明」とか「翌日普通に友人と遊んでおり被害者ではあり得ない行動だ」「加害者にこんなメールを送るはずがない」とかなんとか責めてくるのよ。

 

(以下、1/14追記)

 

www.newsweekjapan.jp

 

こちらの記事で、

 

被害者のうち警察に相談する人はたった5.6%に過ぎない。誰にも相談しない人がもっとも多く、約6割を占める。

 

とある。ソースとなる数字は、安倍政権時に行われた、内閣府による性暴力についての調査。男女5000人を対象としたものだ。上の記事の数字は男女合わせてのもののようだが、ここでは女性の方の数字だけ見てみよう。

 

(なお、相談できない、警察に行けない泣き寝入り率は男性被害者の方が圧倒的に高い。ほぼ0人)

 

www.gender.go.jp

 

女性の回答者は1803人。そのうち、8.9%にあたる160人が「無理やりに性交等をされた被害経験あり」と答えている。学校や職場の自分の知人女性のうち1割弱が「無理やりに性交等をされた被害経験あり」と考えると、思ったよりも「多いな」と感じないだろうか?俺は衝撃を受けたよ。きっとあなたの周りにもいる。

 

同じく女性の被害者だけで見ると、被害を誰かに相談したのは125人中37.6%(47人)。警察に相談したのが125人中6.4%(8人)。

 

性被害者の9割以上は、警察に行けていない。

 

なので、「なんで警察行かなかったの?被害者なら普通行くでしょ」という言説は、まったく現実と異なっている。警察に行ける被害者の方が超レアなんだよ。

 

普通は警察に行くのだとしたら、なぜ被害者の9割以上が警察に行っていないのか?彼らのいう「普通」って、何?そんなものは、いわゆる「僕の考えた正しい被害者像」でしかないのでは。

 

避難所の被災者がパチンコに行ったって、難民キャンプの子供がスマホゲーで遊んだって、文句つける人種はいるからな。「本当の被災者ならパチンコなどするはずがない」「本当の難民ならスマホなど持っていない」とかな。

 

(7)相談しなかった理由
 無理やりに性交等をされた被害について、「どこ(だれ)にも相談しなかった」という人(85 人)に、相談しなかった理由を聞いたところ、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」が 43.5%と最も多く、次いで「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」(32.9%)、「そのことについて思い出したくなかったから」(21.2%)などとなっている。(図 5-7-1)

*1

 

「恥ずかしい」、あるいは「屈辱」と言ってもいいかもしれない。

 

昨日まで、人権を持つ一人の立派な人間として、社会からも周囲からも尊重され、愛されて、それが水や空気のように当たり前だと思って生きてきた人間が、ある日突如として、思いも寄らない形で、遊び半分で弄ばれ、玩具のように扱われ、性欲の捌け口にされたなら。自分の尊厳が蹂躙されたなら。自分が尊厳ある一人の人間じゃなくなってしまった、破損してくだらない無価値な存在になってしまったように感じる。これは性被害だけじゃない、パワハラ被害者やイジメ被害者にも共通する、普遍的な心理だと思うんだよ。

 

なので、できることなら「なかったこと」にしたいという感情が働くのだ。周囲に相談したら、警察に行ったら、被害が確定してしまう。これは怖いことだよね。自分という存在が気軽に、遊び半分で、玩具みたいに蹂躙されたことが、家族や友人にもバレてしまう。そうなれば、幸せだったこれまでの人生には二度と戻れないと考えるのは理解できるだろう?*2

 

そしてショック状態で呆然としたまま日常生活を送るうちに、ますます警察には行きづらくなる。そのうちに「なんですぐ警察行かなかったの?」と責められるような恐怖も出てくるだろう。

 

これがもし通りすがりのレイプ魔に襲われたのなら、もう少しは「誰かに相談する」「警察に行く」という選択肢も浮かびやすいかもしれない。そういうのが一般的に想定される「性被害」なので、「性被害を受けた」という現実を理解しやすいからな。でも内閣府の調査を見てもわかるように、性加害者の属性はほとんどが身近な人間なんだよ。特に信頼する人間や尊敬する上位者が多い。普通の人間は、身近な信頼する人間の事は警戒していないため、性被害に遭ってもすぐに現実を理解し、受け入れるのが難しい。一般的に想定される「性被害」ではないからね。

 

日本人留学生の性被害 加害者は駐在員 見知らぬ土地で何が… | NHK | WEB特集

アンケート結果、衝撃的。現地の頼れる日本人男性たちによる留学生への性暴力が常態化しているのか。尊厳を踏みにじられた被害者は心を守るために「大したことない」と認知を歪めてしてしまう。犯罪者の思うつぼ

2022/02/18 08:27

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「この出来事はなんなのか」「自分はその気になればもっと強く拒否や抵抗ができたのではないか」「それをしなかったのは自分なのだから、あの出来事は仕方なかったのではないか」と自分を責める事で「信頼するあの人」と性被害の整合性を取ろうとしたりすることもあろう。

 

そのように身近な人間に性加害され、しかも「強く抵抗していなかったので合意と認定される」ケースが多かったので、不同意性交の法改正が必要だったのだよな。

 

で、かろうじて警察に行けた人はどうなるのかというと、だいたいどうにもならない。

 

2007年から2011年の統計資料を基にレイプ事件のうち裁判所で罪が裁かれるのはたったの1.92%と推定

 

ニュース見てるとしょっちゅう性加害者が逮捕されているように思えるが、実際はほとんど捕まることはない。「なんですぐバレるのに昏睡レイプなんかして破滅するのか」みたいな疑問を口にする人がいるが、全然バレないから大量に性加害者がおるのだ。

 

志らく on X: "今回の松本人志さんの件だけじゃなく、なんでそんなに週刊誌の言うことなんか信じるんだ?  この国は法治国家だ。被害にあったら警察に行くべき。もし警察で取り合ってもらえなかったり、加害者の事務所の圧力で事件をないものにされたらその時初めて週刊誌に訴えればいい。…"

丸田憲司朗、武内俊晴、千秋涼祐、千葉健太、樋野良輔。性加害者のスマホに数十人もの被害者の写真や動画が残っている事は珍しくない。それだけ泣き寝入りしており、すぐ警察に行ける被害者は少数。性被害の難しさ。

2024/01/11 16:36

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少なくとも、この状況は改善した方がいいというのは同意してもらえるんじゃないかね。そのために何か考えたくならないか?

 

↓数字の解釈が怪しいかもしれんので、検証用にリンクを貼っておく。自分で確認したい方はこちらを。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/r02/r02danjokan-7.pdf

 

なので。「なんで警察行かないの?」「普通は即行くでしょ。本当の被害者なら」みたいなことを平気で言うのは、本当に人間理解が浅すぎると恥じた方がいいんじゃないかと思う。特に落語家みたいに人間理解が深いはずと期待されるような人からこういう言葉が出ると、暗澹たる気持ちになるよ。

 

「自殺するぐらいなら会社辞めればいいじゃん」「自殺するぐらいならいじめっ子を殺せばいいじゃん」とかもそうだが、中学生レベルの素朴な主張をするマッチョが多いんだよなぁ。

(追記ここまで)

 

松ちゃんの白黒とは無関係に言っておきたいこと

 

そして今話題の松ちゃんの件については、どうなのかね。わからんことが多いが、松ちゃんや吉本は「どの部分」について「事実無根」と言っているのだろう。文春報道が一から十まで完全に事実無根なのか、そういった会が実施されていたことは事実だが、性行為についてはすべて女性たちと合意の上だった、と主張するのか。

 

(1/14追記。ABCテレビ「news おかえり」にて、島田薫さんが吉本に問い合わせたところ、

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「そういう飲み会はやっていたし、性行為もあったが、全員合意の上だった」という見解が出たそうな。またスポニチによれば、松ちゃん自身も「事実無根」発言を、単なる合意の有無の意味でしか言っていないという。

news.yahoo.co.jp

よって今の俺の認識はこれ。)

 

若い人は知らんだろうか、俺が多感な二十歳だった頃のダウンタウンってのは本当にすごい存在で、ごっつとガキとHEYHEYHEYは見てないやつの方が少ない、ほとんど共通言語のようなものだった。90年代においてSMAPダウンタウンと小室は社会的に別格の、まさに神のごとき存在だった。とりわけ松本人志の影響力よ。俺も普通に好きだったし、1万円(だっけ?)ライブのビデオを繰り返し観ていた。今田が入院するネタが凄かった。コントももちろんすごいんだけど、ガキ使などで見せるフリートークにおける閃き、切れ味が天才的だったんや。そして、俺は今回の一連の出来事には衝撃を受けている。裁判の結果がどうなれば昔のように松ちゃんで笑えるのかわからない。

 

まあともかく、今俺が言いたいのは、あのLINEを「被害者」が書くことは普通にあり得るということや。今後何がどう転がるにせよ、あれが「本当に被害者だったらこんなこと書かないでしょ」とゴリ押しされるのだけは現時点で抵抗しておきたい。松ちゃんを信じているファンも、擁護する人も、本当にここだけはわかっといてほしい。被害者がああ書くことは普通にあり得るのや。そこをあげつらうのだけはもうよそうぜ。

 

まとめ

  • 性被害者が警察に行くのは「普通」ではない。むしろ9割以上の被害者は警察に行けていない(内閣府調査より)
  • 性被害者がその相手にお礼メールを出すことは別に珍しい事ではなく、普通にあり得るし、それをもって同意があった証拠にはできない

 

少なくともこの2点ぐらいは常識として共有されてほしい。告発者たちを疑うのはいいが(もちろん冤罪もあり得る)、「普通は警察に行くはず」「被害者がお礼メールを出すはずがない」は認識を改めてくれということ。それは言っちゃいかん言葉だよ。

 

以下の望月晶子弁護士のコメントもよくわかる。尊厳を蹂躙され、破壊された人間の心の動きは、単純じゃないんだよ。

 

被害者が平静を保とうと、普段と変わらない行動をすることは決して珍しいことではありません。むしろ弱者である被害者が、加害者におもねるような言動をとることはしばしばあります。同時に性被害者は『あんなところに行ってしまった自分が悪い』という自責感に苛まれ、苦しんでしまう。こうした被害者心理への理解が少しずつ進んでいる昨今の社会では、迎合メールが『同意のない性被害はなかった』と言い切る論拠にはなりません。

 

追記。辻愛沙子氏と、佐藤倫子弁護士のツイート。

 

 

上記のようなことは、以下の記事でも触れられている。

 

vsco.info

大阪高等検察庁の田中嘉寿子検事による講演とのことで、詳しく知りたい人は読んでみてほしい。現役検事の話は参考になるだろう。

 

こういう発信はまだまだ足りていないのかなと思う。知らないこと自体は仕方ないのかもだが、説明されたら理解してほしいものだ。

 

特に今回文春と告発女性を叩いているインフルエンサーの方々。一般大衆より知能が高いのが売りのはずなのに、昭和の価値観を持った量産型凡夫みたいなコメントしかできていなくて悲しくなる。世間の俗説・古びた常識を一刀両断し、現代的で合理的な知見を発信するから貴方がたに価値があるのではなかったか?それがネットで大量に見られる昭和の価値観を持った量産型凡夫みたいなコメントを発するようになったらおしまいなんじゃないの。キツいしサムいよ*3

 

さらに追記。ろくでなし子さんのポスト。

 

後日わたしはその先生のイベントにわざわざ出向いて行って、わたしから明るく挨拶してしまったんだよね。自分でも何がしたいのかわからないけど、全て無かった事にしたかったのだと思う

 

芸人も漫才師もこういう機微をこそ表現してほしい。

*1:※これは男女合わせての数字なのでさっきの女性のみの数字とは少し違うのに注意

*2:俺がイジメに遭ってた時も、家族にだけはバレたくなかった。家の中までその地獄で汚染したくなかったのだ。

*3:こういったキツいとかサムいとかいう言い回しを日本語に根付かせたのも松ちゃんだ。偉大さは疑うべくもない